ここで、「Appleは、完全な自動車を作ろうとしているのだろうか」という本来の疑問に戻る。
この問いに対する答えは実に簡単だ。単純に、「Appleが望むような利益率を実現することは不可能であるため、それはあり得ない」といえる。
しかし、本当にそうだろうか。
IHS Automotive Technologyのシニアアナリストであり、Infotainment & HMI部門担当マネージャを務めるMark C. Boyadjis氏も、「Appleにとって、自動車業界の利益率は低過ぎる」と指摘している。しかし同氏は、「Appleが受託製造という選択肢を取るとしたらどうだろうか」と提言する。
Boyadjis氏は、「Appleは設計プロセス全体を管理したがる企業だが、もし自動車メーカー(OEM)が、そのような企業に大半のプロセスをアウトソーシングすることに前向きであれば、『iCar』を完成させることも不可能ではないと思う」と述べる。
同氏は、「Appleに関してはこれまでにも、電池技術やカーボンファイバー、ヘッドアップディスプレイ(HUD)など、さまざまなうわさが流れてきた。Appleは、自動車の開発・設計に関するあらゆる要素を把握してから、何かを作り出そうとしているのかもしれない。そして、Appleの意向が、製造業者のビジネスモデルや事業規模と合致すれば、受託製造を行うこともあり得る」と続けた。
Juliussen氏によると、内燃エンジンを持つ自動車を製造するには、数十年に及ぶ経験が必要だという。しかし、電気自動車への移行が進めば、機械的な複雑さが軽減されることになるため、技術メーカーにとっては自動車市場への参入障壁が低くなる可能性がある。
さらに重要なのが、Appleが自動車工場を建設する必要があるとは限らないという点だ。
Juliussen氏によると、「自動車メーカーは現在、販売可能な数を超える自動車を製造している。例えば欧州は、自動車が過剰生産状態にあるという厳しい現実に直面している。このため、一部の工場を受託製造に回す自動車メーカーが出てくる可能性もある。また、中国の自動車メーカーも、今後10年間で十分な経験を積み重ねれば、受託製造を担うようになるかもしれない」という。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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