ナノインプリント・リソグラフィでは、ウエハー1枚当たりの処理時間を短縮しようとすると、欠陥密度が増加する傾向にある。だが要求されるのは、生産性の向上と欠陥密度の低減だ。キヤノンは、こうした“二律背反”の要求に応えるべく、リソグラフィ技術の改良を重ねてきた。
前々回から、キヤノンがナノインプリント・リソグラフィ技術について講演した内容をご報告している。講演タイトルは「Nanoimprint System Development and Status for High Volume Semiconductor Manufacturing」、講演者はキヤノンの米国子会社Canon Nanotechnologiesでマーケティングおよび事業開発担当のバイスプレジデントを務めるDouglas J. Resnick氏である。
前回では、ナノインプリント・リソグラフィの重要な特性、すなわち重ね合わせ誤差と生産性(スループット)の講演部分を主にご説明した。
ナノインプリント・リソグラフィで欠陥密度の低減が最も重要であることは既に述べた。特に問題なのは、スループットを上げようとすると、具体的にはウエハー1枚当たりの処理時間を短縮しようとすると、欠陥密度が増加する傾向にあることだ。粗く言ってしまうと、生産性(スループット)と欠陥密度は二律背反の関係にある。そして要求されるのは、スループットの向上と欠陥密度の低減を両立させることだ。トレードオフの関係にある2つの事柄を実現することが、基本的に要求されている。
例えばレジストを塗布してテンプレートを加圧する工程では、レジストがテンプレートの凹みに完全に充てんされるまでに一定の時間がかかる。この時間を短縮すると、レジストがテンプレートの凹みに十分には充てんされない箇所が発生し、欠陥となる恐れが増える。
また紫外線を照射する工程では、レジストを十分に硬化させないと、テンプレートを剥がしたときに未硬化部分が流れて欠陥となってしまう。さらにはテンプレートを急いで剥がすと、硬化したレジストの一部がテンプレートに引っ張られて剥がれてしまう。
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