一般的に、有機半導体は大気中において長期にわたる安定動作が難しく、エラー率が高くなるといわれている。そこで研究グループは、大気中で安定な半導体材料とハイブリッド絶縁膜を用いた。特にn型半導体に関して、宇部興産製のベンゾビスチアジアゾール骨格をもつ「TU-1」を採用した。これにより、大気中における移動度は、212日後でも初期値に比べてわずか7%の低下に抑えることができた。これまで用いられていたフッ素系銅フタロシアニン(F16CuPc)だと10日後には半減していたという。材料の変更などにより、セキュリティータグ回路の安定性を向上させることができ、駆動時のエラー率を10%以下にすることができた。
また、自己組織化単分子膜とアルミ酸化膜による膜厚6nmのハイブリット絶縁膜層を用いた。これによって、駆動電圧を2Vまで低減することができたという。高分子膜を用いた従来のデバイスでは、40V程度の駆動電圧が必要となっていた。消費電力の大幅節減が期待されている。
研究グループは、今回の成果を踏まえて、開発したデバイス製造プロセスと産総研が保有する印刷技術を組み合わせることで、生産効率のさらなる向上を図る。同時に、印刷プロセス特有のばらつきも利用することで、より固有性の高いセキュリティータグの開発を目指していく。
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