米国で開催された「Hot Chips 28」においてMicrosoftは、拡張現実(AR)向けヘッドセット「HoloLens」用に設計したプロセッサ「HoloLens processing unit(HPU)」について説明した。
Microsoftは、米国カリフォルニア州クパチーノ(Cupertino)で2016年8月21〜23日に開催されたマイクロプロセッサの国際学会「Hot Chips 28」で、拡張現実(AR)ヘッドセット「HoloLens」向けに設計されたカスタムビジョンプロセッサ「HoloLens processing unit(HPU)」の概要を初めて明らかにした。
HPUは、TensilicaのDSPコア24個と8Mバイトのキャッシュメモリ、6500万個の論理ゲート、1GバイトのLPDDR3を12x12mmのパッケージに集積したもので、TSMCの28nmプロセスを使用している。TensilicaのDSPコアが選ばれた理由の1つは、フレキシビリティにある。Microsoftは、同コアに300のカスタム命令を追加したという。HPUを採用したHoloLensでは、1秒当たり1兆ピクセルの処理が可能だとしている。
HPUは、ホストプロセッサとして機能するIntelのAtomベースSoC(System on Chip)「Cherry Trail」に隣接して配置されるという。
HPUは、5つのカメラと深度センサー、モーションセンサーからの入力情報を融合して、圧縮した情報をIntelのSoCに送信する。ジェスチャーや地図も認識する。
Microsoftは、2016年前半にHoloLensの最重要部について説明したが、HPUの詳細に関してはこれまで公式には発表していなかった。同社は、Movidius製など複数の商用コンピュービジョンチップを評価したが、目標とする性能やレイテンシ、消費電力でHoloLensのアルゴリズムに対応できるチップはなかったという。
Microsoftの著名な技術者でHot Chips 28でHPUについて解説したNick Baker氏は、「カスタム命令を追加できなければ、HPUに必要な計算密度は実現できない」と述べている。
HPUは、スタンドアロン型のアクセラレータと、DSPに密結合したアクセラレータを混載することで、ソフトウェアだけで処理した場合の200倍の処理速度を実現した。Baker氏は、「可能な限りプログラマブル素子を使い、ハードウェア機能は性能目標を達成するために必要な箇所に固定した」と説明した。
同氏によると、「HPUのコードは、さまざまな成熟度や計算、分岐、メモリアクセスパターンなど多彩なアルゴリズムを適用している」という。
HPUは、2016年3月にリリースされた開発者向けキット(販売価格3000米ドル)に搭載されている。Baker氏は、HPUのアップグレード計画やカスタマ向けヘッドセットのリリース時期についてはコメントを避けた。
同氏は、「より解像度が高く視野の広い8Kヘッドセットの開発も目指している」と、将来を見据えた計画についても述べた。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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