Chandrasekher氏は、Centriq 2400の動作周波数や消費電力、価格などは明らかにしなかった。独自に開発されたFalkorは恐らくアウトオブオーダーのCPUコアで、Centriq 2400は、イーサネット、暗号化機能、PCI Express(PCIe)といった周辺機能を数多く搭載したSoC(System on Chip)なのだろう。
このチップの詳細は、2017年3月に開催予定のイベント「Open Compute Project」を皮切りに徐々に明らかにされていく見込みだ。Qualcommが大きな成功を収めれば、Facebookなどの大手ハイテク企業やMicrosoft(マイクロソフト)と協力して、同チップ向けに、OCP(Open Compute Project)仕様に準拠したボードを開発するようになるだろう。
ARMサーバ市場はなかなか勢いが伸びず、スタートアップのCalxedaの他、Applied Micro Circuits、Broadcom、HP(Hewlett-Packard)といったメーカーのARMサーバ向けチップやプロジェクトは、ことごとく苦戦を強いられた。
Moor Insights & StrategyのアナリストであるGina Longoria氏は、「業界の期待を背負って登場したARMサーバだが、それから6年が経過した今も同市場は活気づいていない。むしろ、ベンダーや顧客の勢いは衰えつつある。とはいえ、Intelサーバの代替を望む声は多い」と述べる。ただし、同氏は、Intelのサーバ向けプロセッサ「Xeon」の牙城を崩すには、少なくとも2年はかかるだろうと続けた。
Qualcommは、「調査会社のIDCによれば、2020年までにITの約50%はクラウドベースになると予測している」と述べる。Chandrasekher氏によると、Qualcommは、OpenStackやNFV(Network Functions Virtualization)向けのデータセンターアーキテクチャを活用する通信企業用のサーバ市場も狙うという。
Longoria氏は、「10nmプロセスと独自コアを用いたCentriq 2400は、性能および消費電力の点で、Xeonに立ち向かえる可能性がある。ARMベースのサーバ向けチップ分野では、これまでIntelとまともに勝負できるメーカーは1つもなかった」と語った。
アナリストのBrookwood氏は、Intelが10nmプロセスを用いたXeonを発表するのは2018年になるとみられると述べた。ただし同氏は、「Intelが、“ファウンドリーの10nmプロセスは、Intelの14nmプロセスほど優れていない”と指摘してくる可能性はある」と述べている。
サーバ市場における競合各社が、それぞれのシェアを高めることを狙っている。
Teich氏は「2018年には、次世代ARMサーバ用SoCが市場に投入される見込みである」と述べている。
ARMサーバ用SoC市場には、強力な競合先がもう1社存在する。Caviumだ。同社は、“ARMサーバ市場が本格的に勢いづく”とTeich氏が予測する2018年初頭に、14nmプロセスを用いたARMベースのサーバプロセッサ「ThunderX2」の出荷を開始する見込みだ。同チップは54コアを搭載し、2.6GHzで動作する。
アナリストのLinley Gwennap氏は、ARMサーバを最初に大々的に導入するのは、中国の大規模データセンターになるのではないかと推測している。また、Baiduのエンジニアは、同社がARMv8ベースのシステムを試験中であることを明らかにした。Qualcommは2016年1月、中国貴州省と戦略的提携を結び、その一環としてサーバ向けチップセットのジョイントベンチャーを設立すると発表している。これにより、中国におけるQualcommのARMサーバ向けチップ事業は、有利な立ち位置についているようだ。
Chandrasekher氏によると、この合弁企業は2016年11月に、中国・北京にオフィスを構えたばかりだという。現在はあらゆる業界の人材をCEOやトップリーダーとして採用していて、Chandrasekher氏も取締役に名を連ねている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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