コアメンバーで準備を進めてきた「社内改革プロジェクト」を、いよいよ全社員に向けて周知する日がやってきた。“おかしいことをおかしいと言えない職場”を、今こそ変える。強い決意を胸に、プロジェクトを発表した須藤たちだが、予想通りの反発が返ってきた。「そら来た」と須藤は身構えたが――。
「“異端児エンジニア”が仕掛けた社内改革、執念の180日」バックナンバー
映像機器関連の開発、販売を手掛ける湘南エレクトロニクス(湘エレ)。ある朝、同社が社運をかけて開発した最新のデジタルビデオカメラについて顧客から1本のクレームが入る。そのクレームが引き金となって経営刷新計画が始まり、その一環として450人が希望退職した。湘エレの中堅エンジニア須藤は、会社を何とか変えようと、1人立ち上がる。そして、自分と同じ志を持っていると思われる“仲間”を集め、自社再建に向けてスタートを切ったのだった。
バックナンバー: | |
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第1回 | もはや我慢の限界だ! 追い詰められる開発部門 |
第2回 | 消えぬ“もやもや”、現場の本音はなぜ出ない? |
第3回 | 始まった負の連鎖 |
第4回 | たった1人の決意 |
第5回 | 会社を変えたい――思いを込めた1通のメール |
第6回 | エバ機不正の黒幕 |
第7回 | 450人が去った会社――改革の本番はむしろこれから |
第8回 | 改革は“新しい形のトップダウン”であるべきだ |
湘エレ(湘南エレクトロニクス)では、須藤をリーダーとしたプロジェクトメンバーと、Tコンサル(東京コンサルティング)の杉谷と若菜が会議室に集まっていた。杉谷によれば、キックオフの際に社員からプロジェクトに対するノイズ(否定的な意見、場をかきまわすネガティブ意見など)が予想されることから、きちんと準備を進め、コアメンバー内の共通認識をはかることが重要だという。
【プロジェクトのキックオフに向けての準備】
(1)プロジェクト活動の位置付け
(2)会社をどのような組織にしていきたいか
(3)プロジェクトとしてのビジョンを掲げる
いくつかのスライドをプロジェクターで投影しながら、杉谷と若菜がコアメンバーに交互に説明を始めた。
杉谷:「これから行おうとするプロジェクトの活動ですが、皆さんは知っての通り、社長承認で“経営刷新計画の一部”です。では、仮に本活動が仕事なのか、仕事でないのかと問われたら、どう答えます?」
須藤:「そりゃぁ、仕事に決まっているでしょう」
杉谷:「他の人はどう思います?」
一同:「仕事だと思いますけど……」
杉谷:「では、こんな質問をするけど、皆さんはどう答えるかな」
三井(人事課長):「確かに人事としては、こういうことがきちんと決まらず、職場の判断任せでやってしまうと良くないなぁ。部門によって差が出てくるのも望ましくない」
城崎(技術部設計課長):「特に設計は納期も厳しいので、仕事を優先させてしまい、活動はおろそかになりそうですね」
大森:「残業代が出るならやってもいいかなぁ」
末田:「僕ら営業は外に出ていることが多いから、就業時間中は難しい」
及川:「うちの課長なら、活動など自分の時間を使ってやれ! と言うだろうな。つまり仕事と言われても、課長の頭の中では仕事ではないんだ。そんなこと(活動)をしている暇があれば、サッサと設計しろってね」
神崎:「庶務の私からすれば、いつもみんなの雑用的なことをやっているのよ。仕事をしながら改善をしているって感じかしら……」
若菜:「今、神崎さんが言った“仕事をしながら改善”、すなわち、“活動は仕事の中にある”ということに答えが集約されているんですよ」
神崎:「え? 私何か変なこと言っちゃった?」
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