TDKは、東京都内で2017年3月期第3四半期(2016年10〜12月)決算の説明会を開催した。円高の影響を受けたが、売上高と営業利益ともに四半期ベースで過去最高を更新したという。
TDKは2017年1月31日、東京都内で2017年3月期第3四半期(2016年10〜12月)決算に関しての説明会を開催した。売上高は前年同期比7.7%増となる3248億円、営業利益は同7.3%増の325億円となった。「売上高と営業利益ともに四半期ベースで過去最高を更新した」(同社)という。当期純利益は、前年同期比2.0%減の244億円となっている。
同社執行役員の山西哲司氏は「対ドルレートで10.1%、対ユーロレートでは11.5%という円高の影響を受けたが、高周波部品や二次電池の販売拡大や、HDD市場が期初想定より堅調に推移したことにより、増収増益となった」と語る。為替変動による影響金額は、売上高で約373億円の減収、営業利益で約76億円の減益である。
受動部品事業の売上高は前年同期比3.0%増の1479億円、営業利益は同16.6%増の204億円となっている。セラミックコンデンサーおよびインダクティブデバイスの売上高は前年同期比で減少したが、北米、欧州、中国の自動車市場向け販売が増加。スマートフォンを中心としたICT市場向け販売は減少傾向にあるとする。
高周波部品では北米、中国、韓国での需要が好調なことから、ディスクリート製品およびダイバーシティーモジュールの販売が順調に増加。前年同期比1.5倍の増収となっただけでなく、増産による稼働益やモジュール製品の収益改善により、利益率も向上したという。山西氏は「高周波部品は、当社の収益をけん引している」と語る。
磁気応用製品事業の売上高は前年同期比13.0%増となる924億円、営業利益は同2.1%増となる48億円である。HDD市場が低調な中、HDDヘッドの販売はノンキャプティブ向け出荷が増加傾向にあり、期初想定よりも堅調に推移した。マグネットおよび電源製品については、円高の影響もあり売上高は前年同期比で減少している。
フィルム応用製品事業(二次電池など)は、売上高が前年同期比13.0%増の764億円、営業利益は同11.0%増となる162億円となった。中国のスマートフォンメーカーの売り上げが倍増したことに加えて、「ドローンやゲーム機など新規アプリ向けの販売も増加している」(山西氏)と語る。前年同期比と同様に、利益率は20%を超えている。
同社は今回、2017年3月期の連結業績予想の修正を行っている。2017年3月期第4四半期中に、2016年1月に合意したQualcomm(クアルコム)との合弁会社「RF360 Holdings Singapore」設立に関する契約がクロージングする見通しである。合弁のスキームは、TDK子会社であるEPCOSが設立するRF360 Holdings Singaporeの株式51%分をQualcommに売却する内容であり、譲渡益(営業利益ベースで1490億円)の計上が見込まれることから利益面を大幅に上方修正した。
TDKでは、譲渡益のうち約200億円相当を既存事業の収益強化につながる構造改革費用として第4四半期中に充てるという。構造改革の具体的な内容については、HDDヘッドの国内製造拠点をTMRセンサーの製造拠点へ転換すること、HDDに収益体質を依存していた金属磁石は産業機器向け製品に焦点を当てることなどを挙げた。
山西氏によると、EPCOSからSAW(表面弾性波)フィルターやデュプレクサなどの高周波部品が合弁会社へと移管することにより、第4四半期で売上高200億円、営業利益20億円が減少する見込みだ。第4四半期の売上高全体は円安影響により、300億円の増収になると予想している。つまり2017年3月期の売上高は、前回予想の1兆1400億円+300億円(円安影響)−200億円(合弁会社への移管)=1兆1500億円となっている。
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