次は、図3をご覧いただきたい。
左側のピラミッドに“コミュニケーションの種類”を示す。「知恵」「志・エネルギー」など青枠の中は、コミュニケーションのやりとりによって伝わるものを示している。
中央の青い横線を中心に、それより上の部分は双方向の特性を持つコミュニケーション、下の部分は上意下達のように一方通行の特性を持つコミュニケーションである。
これらを、実際の会議などの“場”と照らし合わせて見ると、図中に、「フォーマル」「インフォーマル」と示しているように、違いは以下の通りとなる。
・フォーマルな場=結論を出す
・インフォーマルな場=結論を出さない
「フォーマルな場」は、代表的なものが会議である。「真面目に真面目な話をする」ところである。アジェンダもアウトプットも決まっていて、“報告する場”“決める場”である。コミュニケーションのスタイルは一方通行だ。
一方で、「インフォーマルな場」は、ちょっとしたミーティングや「気楽に真面目な話をする」ところである。議題はなく場所も社内ばかりとは限らない。“相談する場”であり“共有する場”である。
この時期、皆さんの会社にも新入社員が入社しているかもしれない。
新入社員のビジネスマナー研修の1つ「報連相」では、“報連(報告・連絡)”と“相(相談)”とはコミュニケーションの質が違うことを知ることが重要だ。往々にしてエンジニアが苦手とする領域である。
・報告(フォーマルな場で、コミュニケーションは一方通行)
・連絡(同上)
・相談(インフォーマルな場で、コミュニケーションは双方向で信頼関係が大事)
杉谷と若菜の話を聞きながら、プロジェクトの進め方にはこの「場」をうまく取り込み、高いレベルのコミュニケーション(図3で相談より上位)を行うため、インフォーマルな場の重要性を感じた。そして、これらの「場」をプロジェクトの中であちこちに仕掛けておく。それで、少しでも白い目で見られることが減るといいのだが……。味方がもっと増えればいいなぁと、プロジェクトメンバーの皆は同じことを思っていた。
⇒「“異端児エンジニア”が仕掛けた社内改革、執念の180日」バックナンバー
世古雅人(せこ まさひと)
工学部電子通信工学科を卒業後、1987年に電子計測器メーカーに入社、光通信用電子計測器のハードウェア設計開発に従事する。1988年より2年間、通商産業省(現 経済産業省)管轄の研究機関にて光デバイスの基礎研究に携わり、延べ13年を開発設計と研究開発の現場で過ごす。その後、組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画業務や、開発・技術部門の“現場上がり”の経験や知識を生かしたコンサルティング業務に従事。
2009年5月に株式会社カレンコンサルティングを設立。現場の自主性を重視した「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを提唱。2012年からEE Times Japanにて『いまどきエンジニアの育て方』『”AI”はどこへ行った?』『勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ』などのコラムを連載。書籍に、『上流モデリングによる業務改善手法入門(技術評論社)』、コラム記事をまとめた『いまどきエンジニアの育て方(C&R研究所)』がある。
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