ルネサス エレクトロニクスのマルチプロトコル対応通信LSI「R-IN32」「RZ/N1」「RZ/T1」が、産業イーサネットプロトコルの新規格「CC-Link IE Field Basic」に対応した。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2017年8月24日、三菱電機が2016年に発表した産業イーサネットプロトコルの新規格「CC-Link IE Field Basic」(以下、CC-Link IEF Basic)に、ルネサスのマルチプロトコル対応通信LSI「R-IN32」「RZ/N1」「RZ/T1」が対応したと、東京都大田区蒲田で開催された「産業オープンネット展」で発表した。
R-IN32、RZ/N1、RZ/T1はいずれも、ARMのプロセッサコア「Cortex-M」、ハードウェア化したリアルタイムOS、CheckSumやHeaderENDECなどのイーサネットアクセラレータを統合した「R-INエンジン」を搭載した通信LSIだ。EtherNet/IPやPROFINETをはじめとした各種の産業イーサネットプロトコルや、その他の産業プロトコルにマルチ対応している。
R-INエンジンでは、ハードウェア化したリアルタイムOSが、CPUの処理の一部を肩代わりする。そのため、R-IN32、RZ/N1、RZ/T1はCPUの負荷が低い。例えば、RZ/T1はUDP通信時の負荷が22%、FTP通信時の負荷が30%、TCP通信時の負荷が31%となる。それに伴い、通信速度も順に、91Mビット/秒(Mbps)、90.5Mbps、86.1Mbpsとなり、競合製品の50Mbps(UDP通信時)を上回る。
今回、R-IN32、RZ/N1、RZ/T1が対応したCC-Link IEF Basicは、通信速度1Gビット/秒(Gbps)の産業用オープンネットワークであるCC-Link IE Fieldの姉妹規格に当たる。CC-Link IEF Basicの通信速度は100Mbpsであり、CC-Link IE Fieldに比べると低い。だが、ルネサスの説明員によると、実用に必要な高速レスポンスを実現するには十分な速さだという。その上、CC-Link IEF Basicは費用対効果や導入の容易さに強みがある。
例えば、CC-Link IE Fieldでは未対応だが、CC-Link IEF BasicはTCP/IPとの同時通信が可能だ。そのため、Basic専用の機器でなくとも接続できる。また、CC-Link IE Fieldは専用のハードウェア(ASIC)が必要だが、CC-Link IEF Basicではソフトウェアによるプロトコル実装のみでサイクリック通信を実現できる。三菱電機のエンジニアリングツールをそのまま使い、接続機器のパラメータ調整ができるのも利点だ。
CC-Link IEF Basicの接続形態(トポロジー)はスター型とライン型の2つだ。ハブ局経由でスレーブ局をたこ足状にマスター局につなぐのがスター型で、スレーブ局からスレーブ局に次々つないでいくのがライン型である。ライン型のトポロジーを構築するにはスレーブ局にスイッチ機能が必要となるが、R-IN32、RZ/N1、RZ/T1はイーサネットスイッチも内蔵し、ライン型を容易に構築できる仕様になっている。
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