湘南エレクトロニクスの社内改革がひとまず順調に進む中、全ての発端となった新製品のエバ機に関する不正問題の解明は、遅々として進まなかった。そんな中、真相究明の糸口となりそうな事実が発覚する。
「“異端児エンジニア”が仕掛けた社内改革、執念の180日」バックナンバー
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第1回 | もはや我慢の限界だ! 追い詰められる開発部門 |
第2回 | 消えぬ“もやもや”、現場の本音はなぜ出ない? |
第3回 | 始まった負の連鎖 |
第4回 | たった1人の決意 |
第5回 | 会社を変えたい――思いを込めた1通のメール |
第6回 | エバ機不正の黒幕 |
第7回 | 450人が去った会社――改革の本番はむしろこれから |
第8回 | 改革は“新しい形のトップダウン”であるべきだ |
第9回 | “不合理さを指摘できる組織”に、それが残った社員の使命だ |
第10回 | 現場の「見える化」だけでは不十分、必要なのは「言える化」だ |
第11回 | 誰もが“当事者”になれ、社内改革の主役はあくまで自分 |
第12回 | 現れ始めた抵抗勢力、社内改革を阻む壁 |
第13回 | 意思決定の仕方を変えて、周りを巻き込む! |
第14回 | 「部門ごとにファイル名が違う」はあり得ない! 必要なのは業務の“共通言語化”だ |
プロジェクトで、「見える化」を第一歩とし、見える化を通じた「言える化(第10回、第11回を参照)」を促進したことにより、湘南エレクトロニクス(以下、湘エレ)では徐々に本音が出てくるようになっていた。
わずかではあるが、具体的な成果につながりそうな動きも見られるようになってきた。それでも抵抗勢力は一定数存在することには変わりないし、プロジェクトリーダーの須藤の直属上司である森田開発課長からの風当たりが強いのは相変わらずだ。プロジェクトオーナーを買って出てくれた中村技術部長をはじめ、技術担当役員の栗山は、ハッキリとものを言ってくれ、須藤をはじめとするプロジェクトメンバーには何よりも心強い存在だ。須藤は、次の株主総会で退任となるであろう日比野社長に、少しでも良くなった湘エレの姿を見せたいと願っている。
さて、改革プロジェクトとして向き合う大きな問題は2つあった。『湘エレの立て直し』と『エバ機不正問題』である。このうち、1つ目は紆余曲折がありながらも東京コンサルティング(Tコン)の支援を受けながら進み始めたが、もう1つの不正問題の真相究明はほとんど進んでいなかった。
須藤たちプロジェクトメンバーが知らないところで、エバ機不正に直接手を下した人物は製造部の大杉部長と品質保証部の小山課長であった(第6回参照)。
日比野社長が大杉製造部長に原因究明の指示を出したところで、当事者として関わった大杉が真剣にやるはずはなく、原因究明が遅々として進まないのももっともなことだ。さらに、大杉製造部長は、購買部の津村課長に「部品情報の入替え指示」を行っていた。大杉と津村は大学の先輩、後輩の間柄であり、大杉はその関係を悪用したのである。並行して、海外子会社である湘エレAsia Ltd.の村上工場長には、「部品情報が偽りのまま生産を実施」するように指示していた。
その上、試験成績書を改ざんしたのは品質保証部の小山課長であるが、改ざんの指示は品証担当役員である北条からの圧力だった。直接の“主犯格”である大杉製造部長と小山品質保証課長は、お互いの不正関与には気づいたが、その親玉や指示系統はどうやら異なるようである(第12回参照)。
これまでの話を整理するために、主要人物の人物相関図を図1に示す。
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