超広帯域無線(UWB:Ultra Wide Band)が、その測位機能を生かし、IoT分野で復活を果たそうとしている。UWBチップメーカーのDecaWaveはこのほど、調達した資金の一部を、UWBの普及促進を目指す業界団体の設立に充てるという。
かつてノートPC向け無線技術の1つの候補だった超広帯域無線(UWB:Ultra Wide Band)が、IoT分野で復活を果たそうとしている。その提唱者であるDecaWaveは、最近終了したばかりの投資ラウンドで調達した3000万米ドルの資金の一部を、新しいUWB業界団体の設立に投じたい考えだという。
今から10年前、数社の新興企業が、USBとHDMIの無線代替技術として、UWBのIEEE 802.15.3版の策定に取り組んだものの、うまく勢いに乗せることはできなかった。しかしその後、DecaWaveをはじめとするさまざまな企業が、パーソナルエリアロケーション向けUWBのIEEE 802.15.4a版にターゲットを定め、100〜200m以上の距離でセンチメートル級の測位精度を実現したことにより、現在ではその勢いを増している状況にある。
今のところ、このようなUWBチップを提供している企業は、6社ほどある。DecaWaveだけでも、これまでに400万個を超えるチップを販売してきたという。また、ユーザー企業のうち2社は、1年間のチップ消費量が100万個を上回っており、他の顧客企業も、トライアルから導入の段階へと移行準備を整えているところだ。
DecaWaveのマーケティング担当バイスプレジデントを務めるMickael Viot氏は、「このような成長を受け、相互運用性標準規格の認定や、世界的な規制問題への対応、技術の促進などを手掛けることが可能な、UWBアライアンスの設立を求める声が高まっている。2018年中に、業界団体を始動させたい考えだ」と述べている。
参加を求められるUWBチップメーカーとしては、スイスの3dbや、Alereon、Bespoon(2017年にドイツの工作機械メーカーTrumpfによって買収)、Novelda、Time Domain(2016年に5D Roboticsによって買収)、Ubisenseなどが挙げられる。またアライアンスには、OEMやエンドユーザーなども参加するとみられる。Viot氏は、「DecaWaveだけでも、20社以上のOEMパートナーの他、製品への採用を進めている顧客企業を150社、確保している」と述べる。
DecaWaveは、調達した資金の大半を、40nmプロセス適用の次世代チップ向けに投入するとみられる。27個の外部部品の多くを統合することにより、既存のチップを、外部部品を5つ程度しか使用しない高度に統合されたBLE(Bluetooth Low Energy)チップに近づけていきたい考えだ。
Viot氏は、「UWBの測位機能は、RFIDのメートル領域とLoRaやSigfoxの数キロメートル領域との間のギャップを埋めることができる。近い将来の用途例としては、スーパーマーケット1店舗を、5〜6個のリーダーで簡単にカバーできるようになるといったことが挙げられる」と述べる。
DecaWaveは2004年の設立以来、最近獲得した資金を合わせると、計6000万米ドルを調達したことになる。2019年中には利益を上げられるようになる見込みだという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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