わずか2分子の厚み、超極薄有機半導体の開発に成功:分子長さのばらつきを利用し製膜(2/2 ページ)
さらに研究グループは、アルキル鎖の長い分子と短い分子の混合比を変えて製膜をし、その効果を検証した。これによると、長い分子をわずかに混合すると、2分子膜同士の積層を抑えることができ、超極薄半導体が効率よく得られることが分かった。
超極薄半導体の形成メカニズム。上は長鎖分子と短鎖分子の混合比を変えた薄膜の顕微鏡像、下はフラストレーションの効果の概念図 出典:東京大学
これらの研究成果を基にTFTを作製し、その特性を評価した。ゲート電圧を印加してドレイン電流の変化を測定したら、伝達特性は負のゲート電圧を印加するとドレイン電流が増加するp型特性を示した。電流−電圧特性は、一定以上のドレイン電流を印加するとドレイン電流が一定となるTFTの挙動が現れた。
超極薄TFTの特性。左は飽和領域の伝達特性、右は出力特性 出典:東京大学
伝達特性のデータを解析したら、飽和領域の移動度は6.0cm2V-1s-1となった。しかも、極めて薄いTFTは外部からの刺激に対して、電流値が敏感に応答することを確認した。
研究グループでは今後、極めて薄い半導体の形成に向けて、分子材料の設計と製膜法のさらなる最適化を進め、高感度分子センサーの実用化に向けた薄膜TFTの開発を行う。さらに、生体細胞膜に似た単層2分子膜の特長を生かし、機能性人工超薄膜への応用に取り組む方針だ。
- 大面積の2次元有機単結晶ナノシートを作製
東京大学、産業技術総合研究所(産総研)、物質・材料研究機構(NIMS)らの研究グループは、有機半導体インクを用いた印刷手法で、膜厚が15nm以下の2次元有機単結晶ナノシートを10cm角以上の大きさで作製することに成功した。高移動度と低接触抵抗を両立した有機半導体を実現することができる。
- 東京大学ら、「ワイル磁性体」を初めて発見
東京大学物性研究所の黒田健太助教らによる研究グループは、反強磁性体マンガン化合物の内部で、「磁気ワイル粒子」を世界で初めて発見した。
- 東京大学、固体中で特定方向への放熱に成功
東京大学生産技術研究所の野村政宏准教授らは、固体中で熱流を一点に集中させる「集熱」に成功した。新たな熱制御方法として期待される。
- 東京大学、熱の波動性を用いて熱伝導を制御
東京大学生産技術研究所の野村政宏准教授らは、熱の波動性を利用して、熱伝導を制御できることを初めて実証した。【訂正あり】
- 量子トンネルFETを酸化物半導体とSi系材料で実現
東京大学大学院工学研究科教授の高木信一氏らは2017年12月4日、極めて小さな電圧制御で動作可能な量子トンネル電界効果トランジスタを開発したと発表した。
- 薄型で伸縮自在、スキンディスプレイを開発
東京大学と大日本印刷は、薄型で伸縮自在なスキンディスプレイを共同開発した。スキンセンサーなどと組み合わせることで手軽に健康管理が行える。在宅ヘルスケアなどへの応用を見込んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.