もはや一国でモノづくりは不可能、ZTE措置が突きつける現実:製品分解で探るアジアの新トレンド(28)(4/4 ページ)
先ほど、「間接的影響」という言葉を使った。QualcommやSkyworksのチップがZTEに売れなくなった場合、そのメーカーに関与の大きい、日本の部品、素材、材料、機器、装置メーカーにも余波が及ぶだろうことは間違いない。
日本の多くのメーカーが、Qualcommとも、Skyworksともさまざまな面でつながっているからだ。
ZTEのスマートフォンの内部は図4のように比率こそ米国が圧倒的だが、欧州、韓国、中国、日本など全世界にサプライチェーンを持った上で成り立っている。中国の1企業のみの流れが止まるという、局所的な問題ではもはやないわけだ。製品を入手できなくなる懸念もあるために、弊社は大慌てでZTEのスマートフォンなどを複数台購入した。世界のトッププレーヤーの1つが止まることなど、本来であれば、あってはならない。われわれなりに本件の深堀りをさらに続けていきたいと思っている。
なおZTEは、自社でもLTEプロセッサをはじめ多くの半導体を持っている(いずれもミドルレンジ製品で、ハイエンドチップは取り組んでいない)。それ故、今回の米国の措置が、中国内でQualcommの代用品を作れるようになるための大きな原動力となる可能性はある。数社ある中国のパワーアンプメーカーが立ち上がり、米国勢なしでも、パワーアンプを全領域において賄えるようになることも考えられる。ただし、そうなるまでには、かなりの時間がかかるだろう。
いずれにせよ、今回のZTE制裁と、ZTEのスマートフォンの中身は、もはや一国ではモノが作れないという、エレクトロニクス業界の現実を、痛切に突きつけてくる。
“Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年に渡る半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。
百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。
⇒「製品分解で探るアジアの新トレンド」連載バックナンバー
- ドンキ“衝撃の1万円台PC”、影の立役者は中国製チップだった
ドン・キホーテがプライベートブランドのPCとして発売した「MUGA ストイックPC」。本体価格で1万9800円という衝撃の価格を、なぜ実現できたのか。その裏には、実力を伴った中国製チップの存在があった。
- 常識外れの“超ハイブリッドチップ”が支える中国格安スマホ
中国Ulefoneが発売した「Ulefone U007」は、わずか54米ドルという超格安スマートフォンだ。なぜ、これほどまでの低価格を実現できたのか。スマートフォンを分解して現れたのは、常識を覆すほど“ハイブリッド化”された台湾製チップと多くの中国製チップだった。
- Nintendo Switchのチップ解剖から考えるデグレード版Tegra X1を選んだ理由
今回は、任天堂の歴代ゲーム機の搭載チップを簡単に振り返りつつ、2017年3月発売の新型ゲーム機「Nintendo Switch」の搭載チップについて考察する。発売前「カスタマイズされたTegraプロセッサ」とアナウンスされたプロセッサの内部は、意外にも「Tegra X1」の“デグレート版”だった……。
- 初代ファミコンとクラシックミニのチップ解剖で見えた“半導体の1/3世紀”
家庭用テレビゲーム機「任天堂ファミリーコンピュータ」の発売からおおよそ“1/3世紀”を経た2016年11月にその復刻版といえる「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」が発売された。今回は、この2つの“ファミコン”をチップまで分解して、1/3世紀という時を経て、半導体はどう変わったのかを見ていく。
- NVIDIAが解説するディープラーニングの基礎(前編)
エヌビディアは2018年4月24日、ディープラーニングに関するセミナー「NVIDIA Deep Learning Seminar 2018」を東京都内で開催した。本稿では、セッション「これから始める人のためのディープラーニング基礎講座」から、ディープラーニングの歴史や概要、学習の流れについて紹介する。
- 2017年アナログICメーカー売上高ランキング
IC Insightsは2018年5月1日(米国時間)、2017年におけるアナログICメーカーの売上高上位10社を発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.