EE Times: Chen氏は現在、どのような夢を描いているのか。
Chen氏: 台湾は、ファウンドリー事業の構築を成功させた今、多くの企業が追従できるような新しいモデルを必要としている。
EE Times: それはどのようなモデルなのか。
Chen氏: 新興企業の中でも、特にAIやデータサイエンス、エッジサーバなどの分野において、ソフトウェアと連携可能なハードウェアを利用しようとしている企業にとって、新しいチャンスが出現している。次のインテリジェント時代に重要な鍵となるのは、継続的な監視が可能なセンサーだ。
センサーはハードウェアであるため、台湾は、ハードウェア分野での強みを生かすことによって、クロスオーバー事業を生み出せるのではないかという期待が高まっている。ハードウェアとソフトウェアの統合を深化させることを考え付いた新興企業は、前途有望だといえる。
EE Times: しかし、AI事業は細分化される可能性があるため、AIハードウェアの微細化は難しいとの見方が大半を占めている。
Chen氏: 台湾にとっては、そのような細分化の方が、「勝者が全てを得る」というインターネットモデルの場合とは違って、力を発揮することができるのではないだろうか。低レイテンシの5G向けIoTアプリケーションや、没入型動画、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)向け専用ハードウェアなど何であれ、台湾メーカーにとっては、ハードウェアとソフトウェア統合を実現する上で、多くのビジネスチャンスが広がっている。
EE Times: このような新しいビジネスモデルを構築していく上で、MOSTにできることは?
Chen氏: まず1つ目は、新しいプロジェクトに十分なリソースを確実に分配するということ。2つ目は、台湾の規則を、新興企業が稼働していく上でもっと対応しやすいものにすること。そして3つ目は、最も難しい課題だが、文化を変えていくということだ。例えば、研究者たちに、新興企業の設立や、海外へのインターンシップ、シリコンバレーでアクセラレータ分野での実務経験を積むことなどに対して、十分なインセンティブを提供すべきだ。
EE Times: 新興企業向けエコシステムの構築実現に向けた、Chen氏のエネルギーと熱意に大変感銘を受けた。しかしChen氏は、キャリアの大半を浮世離れした地位で過ごしてきたのではないだろうか。私の記憶違いでなければ、業界の現場では実際に仕事をした経験がないのでは?*) Chen氏の新興企業に対する強い関心は、一体どこから来るのか。
*)Chen氏は、台湾の半導体技術分野における他の先駆者たちとは異なり、米国への留学経験がない。その理由について同氏に質問したところ、「落花生農家の息子として育ち、貧しさのために留学できなかった」と語っている。
Chen氏: 私は1993〜1994年に、米国ニューヨーク州マレーヒルのAT&T Bell Labsで、客員研究員として働く機会を得ることができ、DSP研究部門に配属された。この時、米国の研究者たちの自らの役割に対する考え方に、直に触れることができた。彼らは常に、製品に対してインパクトの強い価値を与えるための方法について考えている。「IP(知的財産)からIPO(新規公開株)へ」と常日頃から語っていた通り、技術論文をいかに製品に移行していくかが全てだった。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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