これらの課題の解決策として同社が開発したのが、「分散・連成シミュレーションプラットフォーム VenetDCP」だ。VenetDCPでは、自動車メーカーとサプライヤーが“分散”して保有するモデルを自社側で保持したままサイバー空間上で1つにつなぎ“連成”させることで、あたかも1台のクルマの中で動いているようにシミュレーションができるようになる。これによって開発の初期段階からシミュレーションを繰り返し実施することを可能とし、設計の手戻り作業の削減、品質の改善、生産性の向上を実現する、としている。
具体的には、まず開発の初期段階で自動車メーカーが定義する車両通信仕様をもとに、VenetDCPがバスコネクターを自動生成し、各サプライヤーに配布する。各社はそのバスコネクターをそれぞれの環境に組み込むことで、容易に全体を接続したシミュレーションができるという。
各社のシミュレーション環境を接続するという形をとるため、モデルを秘匿したままで連成シミュレーションが可能となるほか、モデルを一カ所に集めることがないため、性能面の懸念も解消される。また、クラウド化も可能で、「低遅延、高性能リソースによる高速化が可能だ」としている。
自動車メーカーやサプライヤー各社はそれぞれ異なったシミュレーションツールを利用している場合が多いが、VenetDCPであればシミュレーションツールやバージョンが異なっていても、連成シミュレーションが可能。異種のシミュレーションツール間でモデルを相互利用するための世界標準規格である「FMI(Functional Mock-up Interface)」にも準拠しており、同社は、「これまでの資産を無駄にすることなく生かせるのが特長だ」と説明している。
なお、同社は企業間でのモデルの流通と連成シミュレーション活用の仕組みやプロセスの標準化活動団体「prostep ivip association」(ドイツ)に加盟しているほか、日本でも経済産業省が発表した「SURIAWASE2.0」にも積極的に参加しているといい、「これらの活動を通して、自動車メーカーと部サプライヤーが共同で車載システムのデジタル試作を行うための標準プラットフォームの整備と確立を目指す」としている。
VenetDCPはサブスクリプション方式で提供する予定。既に複数の企業で検証が進んでいるという。また、島田氏は、「航空機や複雑化するロボットなどでも分散化したシミュレーションができれば、製品開発の速度が圧倒的に変わるだろう」と説明。自動車業界に限らず幅広い分野での展開を図る。
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