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» 2021年06月18日 11時30分 公開

プログラミング教育は「AIへの恐怖」と「PCへの幻想」を打ち砕く?踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(13)STEM教育(1)(3/10 ページ)

[江端智一,EE Times Japan]

「半沢直樹」に見る文系への偏見

 こんにちは。江端智一です。

 今回から「踊るバズワード 〜Behind the Buzzword」の新シリーズ「STEM教育」を始めたと思います。

 “STEM”とは、一言で言えば「"Science, Technology, Engineering and Mathematics" すなわち科学・技術・工学・数学の教育分野を総称する略語」です。

このSTEM教育に関して、最高に乱暴な江風の解説をすれば、STEM教育を怠った国とその国民は、

・「宇宙ロケットの発射に失敗する」

・「原発事故の”メルトダウン”の意味(恐怖)を理解できない」

あるいは、今の時流に合わせると

・「(訴訟を恐れて)国産の新型コロナワクチンの開発をためらう」

さらに細かくいうと

・「”ワクチン=怖い”のパラダイムに縛られた国民を大量生産する」

ことになると、理解しておいて頂ければ、今のところはOKです。

 さて、「STEM教育」の初回である今回は、STEM教育についての話は一切せずに、次回以降の伏線をばらまくことに終始します。故に、今回は「江端は一体、何が言いたいのだ?」という内容になるとは思いますが、今回だけはそういう回だと思って、諦めてください。

 では、本シリーズ最初の話題は、我が国において血液型性別判定(という馬鹿げたカテゴライズ)」の次に使われる、超著名なカテゴライズ「文系/理系」から始めてみたいと思います*)

*)最近は、「文系/理系カテゴライズ」に対する批判/批評が、わんさか登場していることは知っています。その件についてはツッコミ頂かなくても結構です。

 そもそも、文系と理系をどのように定義すべきか ―― が、重要だと思いますが、取りあえず、この連載では、単純な出身校、出身学部および企業の内容で分類することにしました。すなわち、「文系=人文、社会、家政、教育、芸術、(その他)」「理系=理学、工学、農学、保健、(その他)」です。

 そして、今回は、「文系人間と理系人間は、双方を誤解しあっている(下手すると、嫌悪すらしている)」という仮説を置いて考えてみたいと思います。

 私は典型的な理系人間(出身学部は、電子・電気工学、職種はシステムのエンジニア/研究員)であり、文系に対する誤解と偏見があります。今回、その一例を、過剰に語る一例として、あの超有名ドラマを使って、その「誤解と偏見」を書き下してみました。

 このドラマの中で銀行業務の中枢を担う人は、多分文系出身者であり、この文系出身者が、このような『下らない権力闘争』をしているとしたら、文系って、みんなバカなの? と思う人間がいるかもしれません ―― いえ、分かっています。いませんよね、そんな人。正直、私も、上の表を「真面目」に作っている訳ではありません(「楽しく」作ってはいますが)。

 ドラマ「半沢直樹」は、フィクションであり、現代風にアレンジした「水戸黄門」「忠臣蔵」であることは自明です*1)、*2)

*1)参考記事:「「江バ電」で人身事故をシミュレーションしてみた
*2)参考:著者のブログ

 『やられたらやりかえす! 倍返しだ!!』などという暴言、「この私」ですら会社で口にしたことはありません。どんな組織であれ、そんなこと口にする奴は、非常識な人間として、または、アンガーコントロールのできない人間として、誰からも相手にされなくなって、いつの間にか組織から消えています。

 これは、実は、「文系をバカにしている」のではなく、逆に「理系が、世間からどう見えているか」を、比較計測するアプローチなのです。

 理系の人間が登場するドラマでは、大抵の場合、その場面は「研究所」で、その題材は「研究成果の盗用」「証拠やデータの改ざん」「コンピュータのハッキング」などであり、その動機や場面は、個人、研究室内部という、かなり狭い範囲となります。これは、ドラマ「半沢直樹」の舞台スケール感と比較すると ―― 相当にショボイ ―― と言えます。

 これは、理系人間には、組織的、政治的な陰謀や、金額の大きな不正な利益誘導を謀るだけの度量がなく、個人的利益に終始する矮小な人間として描かれている訳で ―― 理系って、みんなヘタレなの? と思う人間は ―― いませんよね、そんな人。でも、私は、かなりのヘタレです。むちゃな上長の命令であっても、正面から逆らえません。

 まあ、長々と書いてきましたが、重要なのは、誰が何と言おうとも、「文系と理系は、違う世界に生きる、違う種類の人間である」という社会通念が定着しているという事実です ―― それを、表立って批判したところで、この事実をひっくり返すことはできません。

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