というわけで、私、「専門家によるAI技術に関する未来予測」は、どんなものであれ、全く、これっぽっちも、1mm足りとも信じてはいません。しかし、そんな私でも「AI技術に関する恐怖」だけは理解できます。
私は、この恐怖が「杞憂である」ことを知っています。
なぜなら、人工知能がどうのこうのと言う前に、(1)IBMのメインフレーム(大型コンピュータ)が登場し、(2)スーパーコンピュータが今なお開発され続け、(3)パソコンが全世界に普及し、(4)スマホを使って市役所の手続ができる、という、もっとすさまじい現実的な恐怖と脅威があったのです。
しかし、そんな中にあって、今なお、子どもたちは、「漢字の書き取り練習をやらされ」「英単語を覚えさせられ」「分数の割り算をやらされ」続けています。私としては、今なお、スマホの携行を禁止している学校や、ノートとエンピツを使っている教育現場が信じられない気持ちです(タブレットを使った教科書の導入は、ボチボチと始まっていますが)。
私としては、
―― 何も変わっていない。むしろ、もっと変われよ
と、叫びたいくらいです。
まあ、「人工知能への恐怖(“AIフォビア”)」なんぞ、“PCフォビア”や“スマホフォビア”に比べると瑣末な話なのですが ―― それはもちろん、AIの中身をおおむね理解しているITエンジニアの奢(おご)りであることも分かっています。
つまり、プログラミング教育の目的が、「AIフォビア」の消滅であるなら、これは、立派な教育目的であると思います。
加えて、以下の図の(1)(2)は、いずれもとても重要です。
上記(1)の「コンピュータ=魔法の箱」幻想は、常に、ITリテラシーに取り組もうとしない人間(シニアに多い)の言い訳として使われてきました。
―― コンピュータは(あるいは、“パソコンは”、“スマホは”、“メールは”)は、私には分からない ――を言い訳に使われて、どれだけ私たちが仕事の邪魔をされてきたことか。
「パソコンを打ったことがない人」が、我が国のサイバーセキュリティを担当する大臣に任命されていた、ということは、今の言葉に置き換えれば「読み書きそろばんができない人が、大臣をやっている程度の国」と、国際的に認定(あるいは嘲笑)されていたことと同じです(著者のブログ)。
それでも、「デジタル化について行けない、私たち高齢者はそんなに『悪い』か?」(著者のブログ)という抗議には、一定の説得力があります。
家電について、私の中にある最も古い記憶は、小さいブラウン管の白黒テレビです。冷蔵庫とは、近所までやってくる「氷屋」から氷の塊を購入して、それを庫内に入れる、というものでした。洗濯機の脱水は手動ローラーで行うものでした。最初の電子レンジは40万円で、ワープロは200万円 ―― そういう時代に生きた人間が、パソコンやスマホを使えないことを、そんなに激しく責めたてられねばならないのか?と、抗議したくなるのは当然でしょう。
だからこそ、義務教育における、『「コンピュータ=魔法の箱」幻想の破壊』は、非常に重要なのです。そして、その幻想の破壊は、単にパソコンやスマホを操作できることだけでは、全く足りないのです。
コンピュータは、どんなに複雑であったとしても、しょせんは、膨大な数の電気スイッチの集合体にすぎない、という事実を正しく理解しないと、上記の“幻想の破壊”や“AIフォビア”からも解放されることなく、ずっと、コンピュータやAI(と呼ばれるもの)に恐怖を感じ続けて不快な人生を送ることになります。
加えて、上記の図中の(2)のように、デジタルというインフラを、水道やガスや電気のインフラと同じように考えられない人間に、未来はありません。
この「未来がない」というのは、「水道の蛇口を開けられないので、水が飲めない」「電気のスイッチを付けられないので、朝になるまで何もできない」「ガスを点火できないので、調理できない」と同じく ―― 生命を維持できない ―― という意味で、「未来がない」のです。
「パソコン」を使えないと仕事ができない、というような、そんな甘っちょろい話ではないのです。
銀行の店舗数は、既に大規模な削減が始まっていますし、市役所の窓口が減っていくのも自明です。
「スマホで手続きしてください」「書類はコンビニで印刷してください」は、既に始まっていて、もう止めようのない未来です。今は、まだ、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の予約などは、電話や窓口対応してもらえていますが、今の高齢者世代の消滅(死亡)を待って、これらのサービスは完全に撤廃されます。
行政サービスの運用コストのほとんどは、人件費です。窓口や電話対応する人を、全てコンピュータ(サーバ)に代えてコスト削減することでしか、将来の日本の行政サービスが生き残る方法はないのです。
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