このような次世代メモリの幅広い導入を実現する上での障壁となっているのが、収益性の向上だ。Handy氏は、「MRAM/ReRAM市場を拡大していく上で、すぐにでも得られるチャンスが、SoCの中に隠されている。NOR型フラッシュメモリとSRAMは既に、限界に達しているからだ。MRAMベースのSoCは、既に出荷を開始しており、ReRAM SoCもまさに今、市場に登場しようとしている。2021年は、将来的に起こり得る変化の兆候が非常に分かりやすく示される年になるだろう」と述べている。
レポートでも指摘されているように、STT-MRAMの魅力と普及の背景には、「MRAMとSTT-RAMは、CMOSロジックウエハーの最上部に直接搭載することが可能なため、既存のCMOSロジック製造プロセスとの間に互換性がある」という点がある。埋め込みフラッシュメモリには既存のCMOSプロセスとの互換性を維持することが難しくなっているため、MRAMが、NORフラッシュとSRAMの置き換えを実現する役割を担う。この他にも重要な点として、不揮発性メモリが省電力化を実現しているということや、MRAMとSTT-MRAMがSRAMと比べてシンプルであることなども挙げられる。
Handy氏は、「MRAMには市場成長の可能性があるが、それでも全てのプレイヤーたちが生き残って利益を享受できるというわけではない。例えば、Spin Memoryは現在、資産の清算を進めており、特許も売却するとみられている。同社の休業が、必ずしもMRAM市場全体の健全性を示しているというわけではないが、短期的に見ると同社は、事業を運営していくための十分な売上高を達成できなかったといえる。同社は、自社専用のバックエンド工場を建設して、一部の標準的なCMOSロジックの最上部にMRAMを搭載する考えだったが、コストが非常に高いため、投資家たちには魅力的がなくなったのだろう」と述べる。
さらに同氏は、「メモリメーカー同様、MRAMを推し進めているのはTSMCやSamsung Electronics、GLOBALFOUNDRIESといったファウンドリーである。これらのファウンドリーは先端プロセス技術を保有している。MRAMがSRAMやNORフラッシュに取って代わるようになるのは、MRAMであれば、先端プロセスを活用したロジックの微細化に合わせてチップサイズを縮小していけるからだ。ある時点で、MRAMの価格が高すぎるために導入を躊躇(ちゅうちょ)していた他のアプリケーションでも十分に導入できる程度まで、価格を下げられるようになるだろう」と続けた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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