――半導体の需要がかつてないほど高まっていますが、国内の装置メーカーの状況はいかがでしょうか。
浜島氏 非常に活況だ。2021年第2四半期には、半導体製造装置の世界総販売額が248億7000万米ドルと、四半期ベースでは過去最高となった。前年同期比では48%の大幅増加となっている。
――製造装置メーカーや材料メーカーの競争力については、いかがでしょうか。特に中国や韓国のメーカーにはどんな印象がありますか。
浜島氏 一朝一夕で技術を進化させられる領域ではないが、中国メーカー、韓国メーカーともに競争力を付けてきているのではないか。特に中国では、年間売上高が500億円規模の装置メーカーも出てきている。中国は資金や人材などのリソースが潤沢なメーカーも多い。米国の大学で半導体技術を研究し、中国に戻って、中国国内企業でその知識を生かす技術者も多いと聞く。
一方で、中国や韓国のメーカーが力を付けてきているのは、至極当然なことだ。先ほども述べた通り、半導体産業はフェアな開発競争の下で発展してきた。もし中国や韓国が、装置や材料の分野で開発力を加速しているのなら、これらの領域で高いシェアを持つ米国や日本も、さらに開発を加速する他ない。スピードを緩めれば追い付かれて追い越される。そういう世界なのだ。
――半導体政策では各国の投資額がクローズアップされますが、人材難に関する視点が欠けているように感じます。エンジニアの不足については、どうお考えですか。
浜島氏 最も欠けているのが、人材ではないか。ただし各国/地域で差があり、半導体が極めて重要な産業だと認識されている韓国や台湾に比べ、日本では特に深刻な課題だ。ようやく半導体産業が再び日の目を浴び始めたが、人材が枯渇しているという状況は変わっていない。待遇の改善や知名度の向上により、必要な人材が採用できている大手メーカーもある一方で、国内で採用できない企業は、海外での人材獲得も行っている。
半導体製造の難しさは、たとえ最先端の装置と材料を購入しても、それだけでは、まともなチップはただの1個も作れないという点にある。所定の設計、材料、プロセスを用いてウエハーを流し、歩留まりが3割に届けばいい方、というところでようやくスタート地点となる。同じ設計、装置、材料を使い、いかに歩留まりを上げていくかがプロセスエンジニアの力量でもある。材料の調合や装置の設定など、エンジニアたちが手分けしてプロセスを改善する。このようなエンジニアがいて初めて、ベストな装置とベストな材料から、ベストな半導体デバイスが作られる。そういったノウハウを知り尽くしているエンジニアがいなければ、どれだけ膨大な資金を投じても、最先端の半導体は作れない。
――若手エンジニアの育成については、SEMIとしてどう取り組んでいますか。
浜島氏 SEMICON Japanでも、学生向けのサイトを用意するなど、若い人たちの間で半導体業界の認知度を上げるための取り組みを以前から行っている。
半導体製造装置は、非常に高度なテクノロジーの集大成ともいえるもの。化学や電子工学だけでなく、機械工学、AI(人工知能)技術、ロボティクス、ソフトウェアなどあらゆるテクノロジーが必要なのだが、残念ながらそれが知られていない。ロボティクスやソフトウェアが専門の学生やエンジニアにも大いに関係のある分野なので、ぜひ、半導体製造装置の領域にも目を向けてほしい。
――日本の製造装置メーカーや材料メーカーが競争力を維持するためには、何が重要になるのでしょうか。
浜島氏 やはり人材が鍵になる。ゲーム/エンターテインメント業界や、米国のハイテク大手企業だけでなく、半導体業界にも関心を持っていただきたい。そうして1人でも多くの人に、半導体業界に携わってもらうことが重要だ。そのためにも、政府と協力して半導体業界を盛り上げていくことは必要になる。
税制優遇などについても、他国の動きも見ながら、日本メーカーがフェアな競争ができるよう取り計らうことも必要ではないか。
――本日(2021年12月15日)から「SEMICON JAPAN 2021 Hybrid」が始まります。今回、最も注力しているテーマは何でしょうか。
浜島氏 技術的なトピックは多数用意しているが、来場者の皆さまには、ぜひ“人と人とのネットワークの再発見”もしていただきたいと思っている。
2020年はCOVID-19の影響もあり、オンラインでの開催となった。物理的、時間的な制約がないなどオンラインの良さもあった一方で、対面の利点を再認識したという声も多くいただいた。オンラインは便利だが、その場に足を運んで実際に会うからこそ、できる話、聞ける話があるのも確かだ。今回のSEMICON Japan開催に関わる活動の中でも、実際にそのような状況に何度も出くわした。
とりわけ中小企業にとっては、SEMICON Japanが商談のきっかけになることが、まだまだ多い。今回はリアルでも開催することで、こうした“きっかけ作り”に貢献できればと思っている。
――2022年の半導体の市況をお聞かせください。
浜島氏 引き続き活況になると予測している。半導体/部品不足については、簡単には収束しないとみているが、分野によって不足感にムラがある状況になっていくのではないか。2021年は、単純な需要増だけでなく、水不足や寒波、火災など、天災と事故が重なり供給難に拍車が掛かってしまった部分があった。2022年は、同じ事態とはならないのではないか。
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