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交流のマイクロ波から直流の電力を取り出す「レクテナ」福田昭のデバイス通信(359) imecが語るワイヤレス電力伝送技術(13)

今回からは、レクテナに関する講演部分を解説する。

» 2022年04月25日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

アンテナと整流回路を組み合わせて交流を直流に変換

 半導体のデバイス技術とプロセス技術に関する世界最大の国際学会「IEDM(International Electron Devices Meeting)」が昨年(2021年)12月11日〜15日に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された。同年12月17日以降は、インターネットを通じてオンデマンドで録画済みの講演ビデオを視聴可能になった。

 IEDMは12日に「ショートコース」と呼ぶ技術講座をプレイベントとして実施した。その1つである「Emerging Technologies for Low Power Edge Computing (低消費エッジコンピューティングに向けた将来技術)」を共通テーマとする6件の講演の中で、「Practical Implementation of Wireless Power Transfer(ワイヤレス電力伝送の実用的な実装)」が極めて興味深かった。講演者はオランダimec Holst Centreでシニアリサーチャー、オランダEindhoven University of TechnologyでフルプロフェッサーをつとめるHubregt J. Visser氏である。

 そこで本講演の概要を本コラムの第347回から、シリーズでお届けしている。なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者のご理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer(ワイヤレス電力伝送の実用的な実装)」のアウトライン。直訳すると「1. はじめに」「2. 誘導型ワイヤレス電力伝送」「3. 放射型ワイヤレス電力伝送の歴史(黎明期)」「4. 放射型ワイヤレス電力伝送の歴史(現代)」「5. 放射型ワイヤレス電力伝送の基礎」「6. レクテナ」「7. 放射型ワイヤレス電力伝送の応用例」「8. 将来への展望」 となる。今回から「6. レクテナ」の講演部分を紹介する[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

 前回までは、講演のアウトラインで「5. 放射型ワイヤレス電力伝送の基礎」の部分を紹介してきた。今回からは、「6. レクテナ」の講演部分(パート)を説明していく。「6. レクテナ」は5つのサブパートに分かれている。サブパートのタイトルは「6.1 アンテナ」「6.2 整流器」「6.3 直流ブースト変換器」「6.4 直流バック変換器」「6.5 結論」である。なお「レクテナ」を前回までは「レクティナ」と表記していたが、和文の文献を調べた結果では「レクテナ」と表記することが圧倒的に多かった。そこで今回からは表記を「レクテナ」に変更する。

レクテナを解説するサブパートのアウトライン。「6.1 アンテナ」「6.2 整流器」「6.3 直流ブースト変換器」「6.4 直流バック変換器」「6.5 結論」で構成する[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

 マイクロ波やミリ波などの電磁波は、電気的には高周波の交流電力とみなせる。アンテナは受信した電磁波を交流電力として出力する。しかし電子機器は通常、直流電力によって動作する。従って交流を直流に変換する整流器(整流回路)が不可欠となる。この整流器とアンテナを組み合わせたデバイスを「レクテナ」と呼ぶ。レクテナの英文表記は「Rectenna」である。「rectifying antenna(整流器付きアンテナ)」を略した名称だ。

世界で初めての本格的なマイクロ波給電実験で「レクテナ」を発明

 マイクロ波で電力を伝送するシステムでは、レクテナは受電側の入り口に相当する。アンテナ、インピーダンス整合回路、整流回路をまとめたデバイスである。インピーダンス整合回路はレクテナに必須ではないものの、受電効率を高めるためにはあったほうが良い。

マイクロ波(電磁波)で電力を送受信するシステムのブロック図。受信側(受電側)のアンテナとインピーダンス整合回路、整流器を組み合わせた素子が「レクテナ(Rectenna:rectifying antenna)」である[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

 「レクテナ」が発明されたのは、1963年のことだ。世界で初めての本格的なマイクロ波給電実験で、受電側のモーターに直流電力を供給するために考案された(本シリーズの第7回「電磁波で電力を伝送するという夢の続き(後編)」)を参照)。考案されたレクテナは受電用のアンテナアレイと、アンテナごとの整流回路で構成されていた。アンテナは半波長ダイポールアンテナである。1個のアンテナごとに、4個の点接触型半導体ダイオードによるブリッジ全波整流回路を取り付けた。なおアンテナの受信周波数は2.45GHzである。

(次回に続く)

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