帝京科学大学は、微弱な近赤外光を高い効率で可視光に変換できる材料を用い、「近赤外光センサー」を開発した。微弱な近赤外光を75%の効率で電気信号に変換することができるという。
帝京科学大学生命環境学部自然環境学科の石井あゆみ准教授らによる研究グループは2022年12月、微弱な近赤外光を高い効率で可視光に変換できる材料を用い、「近赤外光センサー」を開発した。微弱な近赤外光を75%の効率で電気信号に変換することができるという。
近赤外領域の光を検出するため、これまではインジウムガリウムヒ素(InGaAs)などの材料が用いられてきた。ところが、レアメタルのためコスト高となり、ノイズによる制約などもあったという。そこで注目されているのが、既存の技術や材料を用い、「近赤外光を可視光に変換する」技術である。ただ、この技術にも発光効率や輝度が低いなど、実用化に向けて解決すべき課題があった。
研究グループは今回、微弱な近赤外光を高い効率で可視光に変換できる「コアシェル型希土類系アップコンバージョンナノ粒子」を開発した。粒子内のエルビウム(Er)濃度を最大にすることで、近赤外光吸収強度を従来の100倍に引き上げた。また、表面に被覆されている鎖状有機分子を低振動の無機層に置き換えた。ここで無機層に用いた材料は「CsPbBr3(セシウム鉛ハロゲンペロブスカイト)」である。これにより、アップコンバージョン発光過程におけるエネルギー失活(振動緩和)を抑制し、発光効率を5%以上に引き上げることができたという。
さらに、アップコンバージョンナノ粒子の表面をペロブスカイト層で被覆したことで、可視光受光層として機能する「CsPbI3」薄膜にも取り込まれ、結晶性の高い均一な薄膜を形成することができた。ナノ粒子表面と受光層に同種の材料を用いたことで、これまで課題となっていた「エネルギー障壁の形成」なども回避できたという。
アップコンバージョンナノ粒子を組み込んだ薄膜を用い、光検出素子を作製した。この素子は、800nm以上の微弱な近赤外光でも、電流応答を観測することができたという。光検出素子の動作電圧は0.5Vで、その外部量子効率(光電変換効率)は75%に達した。
なお、今回の研究は桐蔭横浜大学医用工学部臨床工学科の宮坂力特任教授と共同で行った。
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