Wolfspeedのパワープロダクト部門担当シニアディレクターを務めるGuy Moxey氏は、「2021年のシリコンMOSFETディスクリートモジュールのパワー半導体市場は、280億米ドル規模に達した。一方でSiCは約20億米ドル、GaNは10億米ドル弱と、明らかに規模が小さい。だが、この先2〜3回の設計サイクルを経るであろう2030年には、SiC市場は約200億米ドル規模に、GaN市場は50〜60億米ドルを超える規模に、それぞれ達する見込みだ」と述べている。
パネリストたちによると、2023年には、一部の低電圧アプリケーションに向けたGaNの価格が、MOSFETと同程度になる見込みだという。Oliver氏は、「価格に関しては、例えば65WのUSB PD(Power Delivery)充電の場合、2023年前半にはGaNとシリコンのシステム価格が同程度になるとみられる。また同時に、3分の1の小型化と軽量化を実現し、モバイルコンピューティング業界向けに強力な価値を提案できる」と述べている。
GaN技術は、低電圧アプリケーション向けとしては理想的だが、2つの技術を組み合わせて使用する車載アプリケーション向けとしては、信頼性に関する課題が残る。
Power Integrationsでマーケティング/アプリケーションエンジニアリング部門担当バイスプレジデントを務めるDoug Bailey氏は、「GaNに関してわれわれが直面している主要な問題は、超高速であるという点だ。GaNをインダクティブな場面で使用するには、低速化する必要があり、寄生インダクタンスを制限する必要がある。われわれは、GaNとSiCを統合する戦略をとっている」と述べる。
SiCはより高電圧で動作できるが、シリコンと比較して製造がはるかに困難となる。
そのため、メーカー各社は数十億米ドルを投じ、需要に見合った生産能力の増強を実施している。
ROHM Semiconductor Europeの自動車部門およびパワーシステムのディレクターであるAly Mashaly氏は、「われわれは以前から、実現には時間を要することを理解しており、2016年には当社史上最高の投資額を発表した。当社は垂直統合システムを有しており、原料の基板や、シリコンのダイ、そしてモジュール製造のための自社工場も備えている」と語った。
パネリストにとって、SiCやGaNの今後の道筋は明確であり、技術も確固としている。
しかし、生産量を増やし、より多くのデザインウィンを獲得し、エレクトロニクス産業が競争力を持つために必要な価格帯に到達するまでには、まだ数年かかるだろう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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