Armに近しい人物は、「RISC-Vは、Armの長期的な採用の存続にかかわる脅威だ。Armはソフトバンクの下で、ロイヤリティー料やライセンス料を著しく引き上げたため、数多くの企業(既存顧客だけでなく潜在的な新規顧客も)がArm設計から離れ、RISC-Vを採用するようになった。Armは現在のところ、スマートフォンの分野では優位性を維持しているが、ローエンドでRISC-Vへの移行が引き続き加速していけば、モバイル分野でもArmの優位性が脅威にさらされることになるだろう」と述べる。
RISC-Vは、ロイヤリティーフリーで利用可能なオープンソースライセンスとして提供されているという点で、他の命令セットアーキテクチャ設計とは異なる。
Patel氏は、「RISC-Vは引き続き、組み込み/IoT(モノのインターネット)アプリケーションや大型SoC(System on Chip)向け制御コアなどの市場においてシェアを拡大していくだろう。RISC-Vは今後、Armが優位性を確立しているクライアント向けアプリケーションの分野に参入していく上で、困難に直面するのではないか」と述べる。
米中関係の悪化や、現在の輸出規制およびその拡大の可能性を考慮すると、中国におけるArmの将来には問題があるように思われると、Triolo氏は述べる。「中国政府が、海外企業のIPの使用を一定期間にわたり段階的に廃止するよう、中国企業に義務付ける可能性もある。そうなると、中国企業は、RISC-Vを含む代替案を検討せざるを得ないだろう」(同氏)
Moor Insights & StrategyのチーフアナリストであるPatrick Moorhead氏は、ArmのIPOの見通しは依然として明るいものの、評価額は下がる可能性があると分析した。
同氏は、「(現在は)どの企業にとってもIPOに最適な時期だとは思わないが、投資家は適切な価格であればArmを受け入れるのではないか」とEE Timesに語った。
同氏はさらに、ローエンドではRISC-VがArmのシェアを奪う可能性が高いと推測する。一方でMoorhead氏は、これは長期的にはArmにとってプラスであると断言する。「Armは、PCとデータセンターで成長している。Armの未来は明るいと考えている」(同氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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