台湾の市場調査会社TrendForceは2023年第2四半期の半導体ファウンドリー市場調査結果を発表した。それによると、上位10社の売上高は前四半期比1.1%減のマイナス成長となったが、第3四半期からは回復に向かう見込みだという。
台湾の市場調査会社TrendForceは2023年9月5日(台湾時間)、2023年第2四半期の世界半導体ファウンドリー市場調査結果を発表した。それによると、上位10社の売上高は前四半期比1.1%減の262億米ドルとマイナス成長となったという。
マイナス成長の主な要因は、スマートフォンやPCといった民生機器の需要低迷が継続し、高価な最先端プロセスの売り上げが伸び悩んでいることに加え、自動車や産業機械、サーバなど伝統的に安定していた分野でも、いまだに在庫調整が続いていることだという。
一方で、テレビ部品の在庫減少および、モバイル修理市場でのTDDI(Touch and Display Driver Integration)需要の急増による突発的な発注量増が、同四半期の稼働率と売上高を下支えした。ただ、TrendForceはこれらの需要について、「短期的な現象で、2023年第3四半期も持続する可能性は低い」としている。
2023年第2四半期における半導体ファウンドリー売上高ランキングをみると、1位は依然として市場の過半以上を占めるTSMCだった。同社は先端プロセスの需要低迷の影響を強く受けて、2023年第2四半期の売上高は前四半期比6.4%減の156億6000万米ドルとなった。7/6nmプロセスでは増収だったものの、5/4nmプロセスで減収となったことが要因だという。ただ、同年第3四半期には、Appleによる次世代「iPhone」関連部品の需要および3nmプロセスの生産開始が追い風となり、同社の業績が上向くことが見込まれるという。
2位のSamsungの売上高は32億3000万米ドルと、前四半期比17.3%の大幅増を記録したが、第3四半期はスマホやPCの需要減によって減収となる可能性が高いという。TrendForceは「SamsungはAppleの新製品に関連する在庫積み増しを期待しているが、増収効果は限定的だろう」と分析している。
3位のGlobalFoundries(以下、GF)は前四半期比0.2%増とほぼ横ばいの約18億5000万米ドルだった。スマホや自動車分野は増収したが、ネットワーク分野で減収となった結果だ。TrendForceは、市況が不安定な中でもGFは航空宇宙、防衛やヘルスケアなどニッチ分野での長期契約や自動車関連の長期契約などが足場を固め、結果として第3四半期もGFも同水準の売上高を維持すると見込んでいる。
4位のUMCは2023年第2四半期、TVやWi-Fi向けSoC(System on Chip)の緊急受注により、前四半期比2.8%増の18.3億米ドルとなった。しかし、個人消費の回復が遅れ、これまでの緊急受注も区切りがつき始めていることから、稼働率と収益ともに減少する見込みだという。
一方、5位のSMICは好機を迎えているという。同社の第2四半期の売上高は前四半期比6.7%増の15.6億米ドルだった。200mmウエハーの売り上げが落ち込んだものの、300mmウエハーについて、主に各種ドライバーICやNOR型フラッシュメモリ、MCUなどの中国での代替が加速していることから、前四半期比約9%増となった。TrendForceは、こうした状況からSMICの稼働率と出荷は引き続き改善し、成長を続けると見込んでいる。
6位のHuaHong Group、7位のTower Semiconductorは前四半期とほぼ横ばい、8位のPSMCは前四半期比で若干減少となった。TrendForceは3社について、「第3四半期も第2四半期と同じような財務状況になる」と予測している。
今四半期、躍進したのは9位のVIS(Vanguard International Semiconductor)と10位のNexchipだ。売上高はVISが前四半期比19.1%増の3億2100万米ドル、Nexchipが同65.4%増の2億6800万米ドルと急増している。両社の売り上げ急増は主にLDDI(Large-sized Display Driver IC)およびTDDIといったディスプレイ分野の製品の緊急注文に後押しされたものだ。Nexchipは利益率の高い55nmプロセス採用製品の展開も奏功し、稼働率は60〜65%と高水準だった。
TrendForceは、民生機器市場が完全には回復していないことから、第3四半期にはVISの勢いが落ち着くと予想するが、Nexchipについては引き続き高成長を維持する可能性があると指摘する。主な理由はNexchipのマーケティング戦略も手伝って中国市場で国内生産の部品を使用する傾向が高まっていることと、2023年下半期に同社顧客のCMOSイメージセンサー(CIS)新製品の大量生産が始まることだという。
TrendForceは2023年後半の市況について、年末にかけて売り上げが上昇する傾向は例年ほど強くないとしながらも、第3四半期から回復に向かうと予測する。また、Appleの新製品発売に伴って同社のサプライチェーンに関わる企業はアプリケーションプロセッサ、モデムや周辺ICの受注で稼働率が高まると見込んでいる。同社は、さらにハイエンドのHPC(高性能コンピューティング)AI(人工知能)チップの注文増によって、高付加価値品の勢いが増し、稼働率が高まる可能性があるとみている。
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