Ellow氏は、最近買収したSupplyframeについても言及している。同社は、1000万人を超える世界各国のエンジニアやサプライチェーン専門家に向けて、プリント基板(PCB)設計メーカーに部品に関するサプライチェーン情報をリアルタイムで提供する企業だ。
「Supplyframeは設計者に、部品の入手可能性や製造可能性、コストなどの基本的な情報をはじめ、部品そのものに関する多くのデータを提供できる。この技術は、チップレット業界にも適用可能だ。エンジニアはアーキテクチャの検討段階において、トレードオフの評価や機能のパーティショニング(例:特定ファウンドリーの特定のジオメトリを使用)を進める一方で、“設計コックピット”内の設計チェーンの利用可能性を把握できる」(Ellow氏)
Ellow氏は、「これは、3D ICの複雑性に関する洞察をどのように提供するかという点で、とても興味深い技術だ」と述べている。
さらに、「Siemensのデジタルツインの観点から見ると、シリコンからパッケージ、ボード、エレクトロニクス、そしてエンドシステム自体のマルチフィジックスシミュレーションに至るまで、製品ライフサイクルリポジトリの中のBOM(Bill of Materials)提出物も含め、現在起こっていることを全て包括している」と説明する。
Ellow氏によると、PAVE360の差別化要素となるのは、MCADや製品ライフサイクル管理をはじめとするその複雑さだという。ユーザーは、サードパーティー製システムを自社環境に接続する必要なく、BOMを各ポイントで取得できる。
SiemensのPAVE360技術により、ユーザーは、デジタルスレッディング(digital threading)技術でクラウドベースの開発環境を構築することが可能だ。この技術は、さまざまな領域全体で接続要件を分析して継続的にモデルをアップデートし、デジタルツインに情報をフィードバックしてシステムの機能性を確保できる。
Ellow氏は、「このような複雑なシステムの設計や最適化、検証、実装、製造、導入、保守などを長期間実行するには、現存していない何か別の方法が必要だ。こうした企業はそれぞれ、設計トレードオフについて必ずしも検討する必要なく統合可能な、ブラックボックスのようなものを提供したいと考えている」と述べる。
そのような例の一つとして挙げられるのが、電気自動車(EV)のユースケースだ。ソフトウェアを変更すると電力消費量が変化し、異なるバッテリー構成が必要になる(つまり、バッテリーの再配置によって重量が変化し、ブレーキやパワートレイン、エンジンシステムなどに影響が及ぶ)
Ellow氏は、「半導体業界は、SoS(System of System)をもっと受け入れる必要がある。これまで長い間、基準レベルのソフトウェアを壁の向こうに投げて、下流チームがそれを検討するという状況にあった。しかし、われわれが今話しているのは、半導体が設計領域全体ともっと密接に関わっていくということだ」と述べる。
「SoSに向けたこのような設計フローが始動する伴い、半導体業界は自然とそれに適合していくだろう。Siemensは現在、業界のコングロマリットから技術リーダーへと移行し、そこではソフトウェアが提供品であるだけでなく、企業評価の中心となりつつある」(Ellow氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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