アナログ/ミックスドシグナル専業ファウンドリーのX-FABが、dMode(デプリーションモード)デバイス向けGaN-on-Siウエハーの提供を始めた。
X-FABは、自社の半導体ファウンドリーサービスにdMode(デプリーションモード)デバイス向けGaN-on-Si技術を追加した。同社は現在、ドイツのドレスデンにある8インチ工場でこれらのサービスを提供している。この発表により、X-FABは炭化ケイ素(SiC)を含むワイドバンドギャップ(WBG)材料の専門ファウンドリーとして選ばれる存在になった。
GaN-on-Siは、X-FABのWBGラインに最適な追加技術である。この二本柱は同社の差別化要因となり、顧客は自社のニーズに合った最適な素材を選択できるようになる。これにより、電力網から車載バッテリー、GPUレベルに至るまで、エネルギー効率の高いソリューションの実現をサポートする。
X-FABは2024年、「XbloX」プラットフォームの次世代バージョンである「XSICM03」を発表した。同バージョンは、SiCを採用することでパワーMOSFETのプロセス技術が向上した。同社は長年、高電圧窒化ガリウム(GaN)を使用してきたが、現在はdModeデバイス向けのGaN-on-Siファウンドリーサービスも提供可能である。同技術は、100〜650Vの耐圧を備えパワーエレクトロニクスに適したdMode HEMTを活用している。
X-FABは、dModeおよびeMode HEMT、ショットキーバリアダイオードなど、顧客向けに独自のGaN技術も開発している。これらは、太陽光パネルや電源装置、高周波整流などによく使用されている。
dModeデバイスかeModeデバイスのどちらを使用するかは、アプリケーションの安全要件や回路トポロジーによって決まる。一般的にはノーマリーオフのeModeデバイスが使いやすいため、より適している。ただし、ノーマリーオフ状態を実現するために、dModeデバイスが、低電圧のシリコン(Si)MOSFETとカスコードの組み合わせで使用される場合もある。これにより、GaNパワーデバイスの高い電力処理能力と、Si MOSFETのシンプルなゲート制御を両立できる。
X-FABによると、現時点ではGaN-on-SiとSiCは補完関係にあり、両技術は競合していないという。650V未満の低電圧アプリケーションの場合、コストが低く周波数スイッチング能力が高いことから、顧客は通常GaNを選択する。
2025年4月には、IQE plcとX-FABが共同開発契約を締結している。この契約の目的は、欧州を拠点とするGaNパワーデバイスプラットフォームソリューションの構築である。IQEのGaNエピタキシー設計とプロセス革新における専門知識を、技術開発とデバイス製造におけるX-FABのよく知られた強みと組み合わせることで、自動車やデータセンター、民生電子機器に最適な技術基板ソリューションを実現する。同技術は、650Vの制限を超えることで将来の製品開発を支援し、パワーエレクトロニクスに対する世界的な需要の高まりに対応する。
さらに、2025年第4四半期には「マルチプロジェクトウエハー(MPW)サービス」を開始する。複数の顧客がチップ製造のために1枚のウエハーを共有できるようにすることで、GaNパワーデバイスを入手しやすいようにするのが目的だ。これにより、プロトタイプや小ロットの製造コストを抑えられる。これは、資金が限られる新興企業や小規模な企業にとっては不可欠なアプローチだろう。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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