シリコンフォトニクスは現在、AIデータセンターインフラにおけるいくつかの限界を克服する技術として広く期待されている。既存の銅配線が物理的な限界に達しつつある中、シリコンフォトニクスは、光を利用してデータセンター間および内部でデータを伝送し、超高速かつ高エネルギー効率な性能を提供する、潜在的なブレークスルー技術として台頭している。
Breen氏は「シリコンフォトニクスは、AIインフラに不可欠な技術だ。データの移動速度がさらに高速化し、ワークロードが複雑化するに伴い、AIデータセンターや電気通信ネットワークには情報をより高速かつ高精度、高電力効率で移動させる機能が必須になっている」と述べる。
アナリスト会社LightCountingが2025年5月に発表したレポートによると、シリコンフォトニクスは今や「必須技術」になったという。同レポートは「シリコンフォトニクス技術は、さまざまな利点があるにもかかわらず、光トランシーバー市場に影響を及ぼすまでに約10年を要した」と指摘する。
さらに同レポートでは「CiscoやHuawei、Intelなどの複数の大手企業による採用の決定が、シリコンフォトニクスの導入を加速させる後押しとなった。Linear Drive Pluggable Optics(LPO)やCPOが活用されることで、この技術の市場シェアは2025年の30%から2030年には60%へと倍増する見込みだ(下図)。BroadcomやNVIDIAなどの複数の大手メーカーによって、このような移行が実現されるだろう」と述べている。
LightCountingは「プラガブルからCPOへの移行は、業界にとって非常に刺激的な出来事だが、重要なのはこのようなソリューションの導入に関して現実的な期待値を設定することだ。さまざまな製造上の課題や低消費電力に関する設定目標を達成することの他にも、エンドユーザーが、コスト削減を継続していくための実行可能な方法の1つとしてCPOを受け入れる必要がある」と述べている。
LightCountingのレポートによれば、2024年に出荷されたトランシーバーやアクティブ光ケーブル(AOC)、LPO、CPOなどに搭載された光チップの市場規模は約17億米ドル程度で、そのうちシリコンフォトニクスチップが占めるシェアは約3分の1だった。2030年にはその市場規模は3倍に拡大して50億米ドルを超え、シリコンフォトニクスの市場シェアも倍増する見込みだという。
またレポートでは「これは6倍の成長であり、予測される市場価値もある程度魅力的なものではあるが、TSMCのような企業にとってはとても十分だとはいえない。CMOSファウンドリーがシリコンフォトニクスに引き付けられるのは、長期的な戦略によるものだ。例えば、Intelが過去20年間にわたって描いてきた『CPOのような光インターコネクトが、あらゆる複雑なASICを機能させる上で不可欠な技術になる』というビジョンだ。このビジョンは今や10年以内に実現する可能性がある。シリコンフォトニクスに注力するなら今が絶好のタイミングだ。Intelは20年早すぎたかもしれないが、大手CMOSファウンドリーやASICベンダーがこのタイミングを逃すことはないだろう」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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