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CPUの廃熱でデータセンターを冷やす、空調を20%節電する技術を富士通開発エネルギー技術

水冷式CPUが排出する55℃と比較的低温の廃水から、連続的に冷水を製造し、サーバルームの冷却に使う。工場施設の冷却では冷水を用いる手法が既にあるが、その冷水を製造するためには、ボイラーなどの高温の熱エネルギー源から排出される比較的高温の廃水を利用しなければならなかった。

» 2011年11月07日 12時38分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 富士通研究所は、CPUから発生する廃熱を利用して、サーバルームの冷却に使う冷却水を製造する技術を開発した。

 クラウドサービスの進展に伴い、データセンターの消費電力が今後増加する見通しである。データセンターの消費電力の約40%は、IT機器の冷却のための空調に使われており、空調効率の改善による消費電力の削減が求められていた。

 富士通研究所が開発したのは、CPUから発生する廃熱を利用して、15〜18℃の冷水を連続的に製造する技術である(図1)。具体的には以下の2つの新技術で実現した。

(1)55℃の低温で効率的に水を乾燥可能な新素材の開発

(2)乾燥に必要な廃水の温度を維持する技術

図1 図1 開発した技術の概要 CPUの廃熱を利用して冷水を製造し、その冷水を空調装置に使うことで、データセンターでの空調の消費電力を最大で約20%削減できるという。出典:富士通研究所(クリックで拡大します)

 今回、これまで冷水の製造には利用できなかった低い温度の熱からも冷水を製造できるようになった点に新規性がある。水冷式のCPUより排出される廃水は、55℃と温度が低く、負荷によって温度も変動するものの、このような廃水からも連続的に冷水を製造することが可能になった。冷却発生装置に入力した廃熱量を100%としたとき、最大で60%の熱量に相当する量の冷水出力が得られることを確認したという。

 同社によると、工場施設などの冷却システムでは冷水を用いるものが確立されている。ただし、そのような冷水を電気を使わずに作り出すには熱源が必要になる。そのため実際には、ボイラーなどの高温の熱エネルギー源から排出される、一定に保たれた高温の廃水からしか冷水を製造できなかった。

 同社は今後、2014年ころの実用化を目指して、大規模化やスペース効率の向上、信頼性の向上に取り組む。この他、工場やオフィスビル、太陽熱発電システムなどデータセンター以外の用途においても、利用されていない低温廃熱の活用を目指す。開発した技術の詳細は、上海で10月に開催された電子機器・エネルギー技術の国際学会「The 2011 International Conference on Power and Energy Engineering」で発表した。

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