半導体の生産能力に関する報告書(SICAS)の発行が休止となる。ファウンドリ大手のTSMCやUMCがSICASプログラムから脱退したことが、主な原因だと考えられる。
半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)はこれまで、半導体製造施設の生産能力を綿密に分析してまとめた報告書を四半期ごとに発行してきたが、2012年2月29日、同報告書の発行を休止することを発表した。前日の2月28日には、Intelが、AMD(Advanced Micro Devices)に続き、世界半導体市場統計(WSTS)を脱退したことが明らかになっている(関連ニュース)。
SIAは2012年2月29日、2011年第4四半期の世界半導体生産キャパシティ統計(SICAS:Semiconductor International Capacity Statistics)を発表したが、この報告書の各ページの上部には、「2011年に、SICASプログラムへの参加に関する重大な変化があったため、2012年第1四半期以降は、SICASの発行を休止する」という通知が赤色の文字で書かれている。
2011年、台湾の半導体ファウンドリ企業であるTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)とUMC(United Microelectronics Corporation)、DRAMベンダーであるNanya Technologyが、SICASプログラムから脱退し、物議を醸した。当時SIAは、再度プログラムに参加するようTSMCに働き掛けているとしていたが、2012年2月28日に発表された報告書には、上記3社のいずれも参加企業として記載されていなかった。
TSMCとUMC、Nanya Technologyが相次いでSICASプログラムから脱退した当時、米国の市場調査会社であるIC Insightsでプレジデントを務めるBill McClean氏は、「TSMCとUMCは半導体ファウンドリ業界において大きなシェアを占めている。そのため、自社の製造に関する詳細な情報が四半期ごとに公表されるのはもう望ましくないと判断したのかもしれない」と分析していた。
TSMCとUMCは、台湾で公式な事業活動を行う全ての企業と同様に、売上高の月間報告書を発表している他、四半期ごとの決算報告書では、製造施設の稼働率を一部公表している。
2012年2月28日、TSMCの広報担当者は、EE Timesのメール取材の中で、今後は生産能力に関する詳しい情報(プロセスノードや技術の種類など)を企業秘密にするため、SICASへの情報提供を取り止める方針であることを明らかにした。同社は今後、製造施設の稼働に関する情報は、四半期ごとの決算報告書の中で発表するという。
UMCの広報担当者も、EE Timesのメール取材に対し、「当社は、TSMCに続いてSICASプログラムから脱退した。これにより、SICASプログラムに加盟する台湾メーカーはいなくなった。台湾メーカーの脱退は、今後のSIAによる情報収集に何らかの影響をもたらすだろう」と回答している。
なお、SIAからのコメントは現時点では届いていない。
McClean氏によると、台湾メーカーが脱退する前は、SICASには世界の半導体の生産能力のうち70%が反映されていたが、現在では約56%しか反映されていないという。1990年代にSIAがSICASの発行を開始した当初は、世界の半導体の生産能力のうち約88%が反映されていた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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