日立製作所と日立産機システムが試作した無線通信モジュールは、920MHz帯に対応し、出力電力が250mWと大きいことが特徴である。対象用途は、産業システムのデータ収集をはじめ、スマートグリッドやスマートシティの長距離の無線データ伝送と幅広い。
日立製作所と日立産機システムは、数kmと広い範囲でデータをやりとり可能な無線通信モジュールを共同で試作したと発表した。920MHz帯に対応しており、出力電力が最大250mWと大きいことが特徴である。「理論値に対して20dB強の減衰を仮定したときの通信距離は3.5kmと長い。無線通信を利用した機器制御やデータ収集などが求められる産業システムをはじめ、スマートグリッドやスマートシティといったさまざまな分野に、開発した無線通信モジュールの適用を目指す」(同社)。技術基準適合証明も収得済みである。
920MHz帯は、日本国内で2012年7月から本格的に開放される周波数帯である。2011年に一部の周波数チャネルが開放されるとともに、送信出力の制限が10mWから、20mW、250mW(簡易無線局のとき)に緩和されていたが、2012年7月25日から920MHz帯の全ての周波数チャネルが利用できるようになる。さらに、スマートメーターなどを対象にした国際標準規格「IEEE 802.15.4g」で使われるなど、世界各国で幅広い利用に向けた制度改正が進められている(関連記事)。
日立製作所と日立産機システムは、今度の市場拡大を見込み、いち早く920MHz帯の通信モジュールを試作した。このモジュールは、出力電力を250mW、20mW、1mWと、異なる3つの値に切り替えられる。近距離通信のときには出力電力を抑え、消費電力を削減することが可能だ。
また出力電力を確保しつつ近傍周波数の出力を抑える急峻(きゅうしゅん)な周波数特性を持ったSAWフィルタを、日立メディアエレクトロニクスの協力で開発した。これにより、近傍周波数帯に対する電波干渉を十分に抑えた無線通信を実現した。
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