情報通信研究機構(NICT)は、業界で初めて「IEEE 802.15.4g/4e」のドラフト最終版に準拠した無線機を開発した。電気やガス、水道といった社会インフラのメーターをインテリジェント化した「スマートメーター」に使える無線機だ。
情報通信研究機構(NICT)は、「IEEE 802.15.4g/4e」のドラフト最終版に準拠した無線機を、業界で初めて開発した(図1)。IEEE 802.15.4g/4eは、スマートメーター向けにIEEE 802.15.4作業部会で策定された、低消費電力の無線通信技術である。今回は開発した無線機は、スマートメーター向けに日本で新たに制度化された920MHz帯に対応させるための物理層仕様や、乾電池だけで数年間動作させるための低消費電力プロトコルといった、IEEE 802.15.4g/4eのドラフト最終版で規定された項目を実装していることが特徴である。
今後NICTは、開発したスマートメーター向け無線機を、IEEE 802.15.4g規格の普及を目指した業界団体「Wi-SUN Alliance」*1)などを通し、日本国内に提供する。また、無線機に搭載した無線通信モジュールの技術移転も進める。なお、今回開発した無線機は、日本国内で実際に運用するための「技術基準適合証明(技適)」も920MHz帯で取得している。
ここ最近、電気やガス、水道といった社会インフラのメーターをインテリジェント化することで、使用量をできるだけ抑え、エネルギー効率を高めようという取り組みが進んでいる。自動検針、状態監視、動作制御といった機能を有するインテリジェント化したメーター(スマートメーター)に不可欠なのが、低消費電力の無線通信技術である(図2)。NICTは、スマートメーター用の標準規格を策定するIEEE 802.15.4g/4e作業部会に技術提案したり、この規格に準拠した無線通信モジュールの開発を実際に進めたりしてきた。
今回開発したスマートメーター用無線機は、無線通信モジュールの他、各種メーターやセンサと接続するためのインタフェースモジュールで構成している(図3)。電源投入時には、マルチホップ通信によってメーター間のデータ収集・配信経路を自動的に構築することも特徴である。また、通信待ち受けやデータ送受信の動作を無線機間でタイミングを合わせて間欠的に実施することで、低消費電力化を実現した。ある所定の処理に必要な合計時間を、「連続的な動作に比べて1/100に抑えた。これによって、電池で駆動しつつも、数年間動作させることが可能になった」(NICT)という。
無線機の外形寸法は84×70×20mm(アンテナ部を除く)、利用する周波数範囲は926.2〜928.0MHz、変調方式はFiltered 2FSK(Frequency Shift Keying)、データ伝送速度は50k、100k、200kビット/秒。ルーティング方式は、ツリー状構造に基づく各無線端末から収集制御局(親機)への単方向ルーティングを採用した。
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