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バイコーが48Vを効率90%で1Vに電力変換、ソフトスイッチPOLも初披露TECHNO-FRONTIER 2012 電源設計

バイコーは、データセンター用マイクロプロセッサ向けに48Vの配電バスから直接、1Vの電源電圧を高効率で生成する電力コンバータを展示した他、ソフトスイッチング方式を採用し、最大98%と高い効率が得られる非絶縁型の降圧POLコンバータを初披露した。

» 2012年07月12日 09時05分 公開
[薩川格広,EE Times Japan]

 米国のモジュール型電源メーカーVicorの日本法人バイコージャパンは、データセンターや通信インフラ装置などで使われるマイクロプロセッサに向けた高効率の電力コンバータを「TECHNO-FRONTIER 2012(テクノフロンティア2012)」(2012年7月11〜13日、東京ビッグサイト)に出展した。さらに同社は、ZVS(zero voltage switching)方式のソフトスイッチングを採用した非絶縁型のPOLコンバータも初披露した。

データセンターの電気料金を年間50万ドル節約

 データセンター用マイクロプロセッサに向けた高効率の電力コンバータは、48Vの配電バスから中間電圧を介さずに直接、マイクロプロセッサの動作電圧である1Vを生成して供給する。Vicor独自の電力変換方式「FPA(Factorized Power Architecture)」を採用しており、一般的な方式である中間バスアーキテクチャ(IBA:Intermediate Bus Architecture)を利用する場合に比べて、高い電力変換効率が得られることが特徴だ。

 具体的には、「48Vの配電バスからマイクロプロセッサの電源端子に至るまでのエンドツーエンドで、変換効率は89〜91%程度と非常に高い。12Vの中間電圧を経由する一般的なIBAでは、効率は約83%にとどまっていた」(VicorのCorporate Vice PresidentでGlobal Sales & Marketingを担当するPhilip D. Davies氏)という。

図1 48Vバスから直接1Vを生成する電力コンバータである。FPAと呼ぶVicor独自の電力変換アーキテクチャに基づく。出典:Vicor (クリックで画像を拡大)

 FPAに基づく2個のモジュールで電力コンバータを構成した。48Vの電圧をまず、電圧の安定化を担う「PRMレギュレータ」に入力し、その出力を電圧変換と絶縁を受け持つ「VTM電流マルチプライヤ」に印加する。そして、その出力を負荷であるマイクロプロセッサに供給するという方式である。IBA方式の他社品に比べて、モジュールのサイズも1/3に小型化できるという。

 Intelが定めるマイクロプロセッサの電源仕様「VR(Voltage Regulation)12.0」に準拠しており、データセンターで標準的に使われているx86アーキテクチャのマイクロプロセッサに対応可能だ。Vicorによると、同アーキテクチャに基づくIntelの最新プロセッサ「Ivy Bridge」や前世代品「Sandy Bridge」もVR12.0仕様を参照しているという。

 「この電力コンバータを使えば、IBAに基づく旧来のコンバータを用いる場合に比べて、プロセッサ当たりの電力損失を10W削減できる。これは、例えば3万個のプロセッサが稼働するデータセンターにおいて、米国の電気料金で年間50万米ドル程度の節約に相当する。日本は電気料金がもっと高いので、この数字はさらに大きくなる」(Davies氏)。

「業界初」をうたうZVS方式の非絶縁POL

 ZVS(zero voltage switching)方式のソフトスイッチングを採用した非絶縁型のPOLコンバータは、Vicorの子会社で電源制御/管理ICを手掛けるファブレス半導体ベンダーのPicor(パイコー)が開発したものだ。Vicorがモジュール型電源で培ったZVS技術を適用することで、高い電力変換効率を達成したことが特徴だという。絶縁型の品種については既に製品化していたが、非絶縁型の投入は今回が初めて。「ZVS方式を採用した非絶縁型POLの製品化は、我々が知る限り、これが業界初だ」(PicorのPresidentを務めるClaudio Tuozzolo氏)と主張する。

図2 ZVS方式を採る非絶縁型の降圧POLコンバータ(クリックで画像を拡大)

 この非絶縁型品の型名は「PI33XXシリーズ」。降圧型で、出力電圧範囲と最大出力電流が異なる6品種を用意した。入力電圧範囲は8〜36V、出力電圧範囲は1〜16V。最大出力電流は10A、最大供給電力は120Wである。変換効率は最大98%と高く、「このクラスのPOLでは業界最高だ」(同氏)としている。ZVS方式の制御ICとパワーMOSFETを内蔵したマルチチップパッケージ品で、外付け部品はインダクタとコンデンサで済む。外形寸法は10×14×2.56mm。

 Picorは今後、この非絶縁型POLのラインアップを拡充し、昇圧型と昇降圧型も追加する計画だ。

図3 写真向かって左から順に、PicorのClaudio Tuozzolo氏、VicorのPhilip D. Davies氏、VicorのGlobal Marketing担当DirectorであるRobert DeRobertis氏。

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