引き続きiPhone 5の半導体サプライヤーの顔ぶれを確認していこう。STMicroelectronicsは3軸MEMSジャイロスコープ「L3G4200DH」と3軸MEMS加速度計「LIS331DLH」を供給している。Appleはこれら2つのセンサーに非常に満足しているようだ。ふと、はたして任天堂も次世代ゲーム機「Wii U」にこれらの同じセンサーを使い続けるだろうかという疑問が浮かんだ。
Dialog SemiconductorはiPhoneシリーズの従来機と同様に、iPhone 5でもメインの電源管理ICを供給する。この電源管理ICは同社が「Agatha II」と呼ぶ新製品で、形名は「D2013」である。Cirrus Logicも従来機に引き続き、オーディオコーデックLSIでデザインウィンを獲得した。
メモリについて見ていこう。今回当社が分解した機種では、SanDisk製の32GバイトNANDフラッシュメモリが搭載されていた。さらに、アプリケーションプロセッサ「A6」のパッケージ内部にも、PoP(Package on Package)技術でメモリが内蔵してあった。エルピーダメモリの1GバイトLow-Power DDR2(LPDDR2) SDRAMで、品名は「B8164B3PM」である。
Broadcomは、デュアルバンド対応のIEEE 802.11nと、Bluetooth 4.0+HS、FMレシーバの機能を統合した無線接続用コンボチップ「BCM4334」で大型のデザインウィンを勝ち取っている。なおこのチップはSamsungの最新スマートフォン「GALAXY S III」にも搭載されていた。
AppleはiPhone 5で、新型のアプリケーションプロセッサであるA6を初めて搭載した。このA6はAppleが自社設計したチップであり、マルチコアCPUとクアッドコアGPUを集積すると予想されている。ただしA6の全貌はまだ明らかになっていない。最大の謎は、CPUのコア数はいくつで、そのコアのタイプは何なのかである。はたして、ARMの「Cortex-A9」のクアッドコア版なのか、ARMの最新コアである「Cortex-A15」のデュアルコア版なのか。Appleが公言しているのは、前世代のアプリケーションプロセッサである「A5」に比べて、性能とグラフィックス能力をそれぞれ2倍に高めたということだけだ。
もう1つの謎は、このA6のチップがいったいどこで製造されているのか、である。Appleはこれまで、A“x”と呼ぶ各世代のプロセッサの製造をSamsungに委託してきた。しかし両社がスマートフォンをめぐって特許係争を繰り広げており、AppleとTSMCの提携に関するうわさも相まって、このA6でも「Appleが製造委託先として選んだのはどちらか」が多くの人の関心事になっていた。当社はまだA6のダイの刻印を確認した解析初期の段階だが、その限りではA6の刻印はSamsungが製造を担っていた従来のA5や「A4」の刻印に似ている。
ARMコアの品種はどれなのか、Appleが低消費電力をうたう根拠は28nm世代の半導体プロセスへの移行なのか、これらも興味が尽きない。AppleがSamsungに委託して32nmプロセスで製造した初のプロセッサはA5で、「Apple TV」の第2世代機種などに搭載されていた。しかしTSMCは28nmプロセスでの量産をかなり以前から手掛けている。当社(UBM TechInsights)はA6に適用されたプロセス技術の詳細を探るため、A6の断面を解析する作業を進めているところだ。現時点でお伝えできる事実は、A6のダイサイズは95.04mm2で、Appleの「A5X」プロセッサの162.5mm2や、A5のうち45nmプロセス技術で製造したバージョンの122.21mm2に比べるとかなり小さくなっているということである。
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