かつてはMicrosoftが新OSを投入するたびに、DRAMの出荷量が増えていた。新OSでハードウェアに求める要件が高まり、PCメーカーがそれに応えていたからだ。しかし「Windows 7」以降、その傾向に変化がある。先週発売された「Windows 8」も、DRAM市場に出荷量の増加をもたらすことはないという。
市場調査会社である米国のIHS iSuppliによると、「これまでのWindows OSとは違い、『Windows 8』の発売によって、DRAMの出荷量が大きく増加する可能性はない」という。
同社は、「2012年第4四半期の世界DRAM出荷量(ビット換算)は、前期比で約8%増加する」と予想している。これまでは新世代のWindows OSが発売されるたびに、DRAMの四半期出荷量は常に2桁増を記録していた。
IHS iSuppliによると、「DRAMの出荷量の増加幅がこれまでと比べて低いと予想されるのは、Windows 8がハードウェアに求める要件がそれほど高くないからだ」という。さらに同社は、「Windows 8が発売されても、2012年第4四半期におけるPCの出荷量は、2011年第4四半期から大きく増加することはない」とも予測する。
IHS iSuppliのメモリ需要予測部門でアナリストを務めるClifford Leimbach氏は、「これまではMicrosoftが新しいOSを投入するたびに、ハードウェアに求める要件が向上していたので、(機器メーカーがそれに応える結果)DRAMのビット出荷量は大きく増加した。しかし、『Windows 7』以降、新OSがハードウェアに求める要件の向上幅が小さくなっており、DRAMの要件に至っては全く変化がない」と述べている。
同氏はまた、「消費者が新しいPCの購入を控える状況が続いているが、Windows 8の発売によって、こうした状況が打破される見込みはない」とも語っている。PC出荷量に関するIHS iSuppliの最新予測によると、2012年は過去11年間で初めてPC出荷量が減少するという(参考記事)。
過去においては、新しいWindows OSがリリースされるたびに、PCメーカーはOSがハードウェアに求める要件を満たすためにDRAMの発注を増やし、DRAMのビット出荷量は大きく増加してきた。例えば、1998年第3四半期に「Windows 98」がリリースされた際には、DRAMの出荷量は約40%も増加した。「Windows 2000」や「Windows XP」のリリース時には、さらに大幅な増加がみられた。
しかし、こうした傾向も、直近2世代のWindows OSでは減速している。2007年に「Windows Vista」がリリースされた時には、DRAMのビット出荷量は24%しか増えなかった。さらに、Windows 7ではメモリを増設する必要がなかったため、Windows 7がリリースされた2009年第4四半期のDRAM出荷量は18%の増加にとどまった。
PCの1台当たりのDRAM容量の推移をみると、まだ増加は続けているものの、その増加幅は以前に比べて小さくなっている。IHS iSuppliによると、2012年第4四半期にDRAMの搭載容量が増加するとみられる機器は、主に、スマートフォンやタブレット型端末、リフレッシュPC(中古再生品)だという。
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