低消費電力のBluetooth 4.0が正式に策定されてから、Bluetoothの用途は確実に広がった。2018年には、Bluetoothに対応した機器が320億個に到達すると予測されている。さらなる普及には、「モノのインターネット(IoT)」がカギになりそうだ。
Bluetooth 4.0の策定が正式に完了したのは2010年7月のことだ。Bluetooth 4.0では、低消費電力を特徴とする「Low Energyモード」が追加された。これにより、消費電力を、従来のBluetooth規格の約1/10まで削減できるという。
低消費電力版が登場したことで、これまでは主にオーディオ分野で広く採用されていたBluetoothの用途が確実に広がった。新しい応用分野の代表的な例が、ヘルスケアや医療、フィットネス/スポーツなどだ。これらの市場では、Bluetoothに対応した腕時計や歩数計といった製品が発売されている。ランニングの際にリストバンドのようなものを装着し、それに搭載されたセンサーで心拍数や脈拍、走った距離を測定、データをBluetoothを使ってスマートフォンに伝送する、といった使い方が増えている。こうした身につけるようなアプリケーションは、小さな電池での駆動が強いられるため、Bluetooth 4.0は適しているといえる。
実際、Bluetoothに対応する機器は急激に増えており、2012年だけで20億個出荷されている。Bluetooth搭載機器の総数は、2013年には100億個に、2018年までには320億個に到達する見込みだ。
Bluetooth技術の認証団体であるBluetooth SIGで、インダストリー&ブランドマーケティングのディレクタを務めるErrett Kroeter氏は、「これまで誰も思いつかなかったような、新しいBluetooth対応機器が次々に登場している」と語る。
例えば、Bluetoothに対応した歯ブラシは、歯を磨いた時間や回数、磨いたときの力の入れ具合といったデータを収集できる。また、Bluetoothを搭載したバスケットボールは、ボールの動きやスピード、ドリブルの回数などのデータを集めることができる。
Kroeter氏は、Bluetoothの次なる市場として「モノのインターネット(IoT:Internet of Things)」を挙げた。同氏は、「Bluetoothは、あらゆるモノに通信機能を組み込んでネットワーク化するIoTの実現のカギを握っている」と強調する。だが、この市場には、同じくIoTを“キラーアプリケーション”とみて普及の加速を狙うZigBeeも存在する(関連記事:ZigBeeのキラーアプリケーションがようやく登場、IoTの普及加速で)。
同じ2.4GHz帯を使用し、低消費電力など似た特徴も持つことから、この両者はよく比較される。これについてKroeter氏は、「ZigBeeは、ネットワークを構築するのが難しいという点で、必ずしもユーザーフレンドリーとは言えない。また、Bluetoothは多くのPCやスマートフォンに標準搭載されているので、ZigBeeを搭載した機器の台数に比べてはるかに数が多い。そのため、アプリケーションを開発しやすい」と説明する。ただ、ネットワークに接続できる機器の台数はZigBeeの方が圧倒的に多いので、「用途によって使い分けることが重要だ」(Kroeter氏)と述べた。
Wi-Fi、NFC(Near Field Communication)といったその他の無線通信技術については、Kroeter氏は「“競合相手”というよりも、互いに“補完”するものだと考えている」と述べている。「例えば、Bluetoothを使ってデータを伝送するには、Bluetoothを搭載した機器同士を認識させるペアリングが必要になるが、NFCを使えばこのペアリングが簡単に行える。ペアリングだけNFCで行い、データの伝送にはBluetoothを使えばいい」(Kroeter氏)。
同氏は、「Bluetooth対応機器は、世界中で増加している。メーカーやユーザーが実現したいアプリケーションに最適解を提供すべく、使いやすい仕様を策定していくことが、われわれの役割だ」と語った。
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