高精細化が進むディスプレイとコンテンツのギャップを埋めるべく、映像をより鮮明にするソフトウェアの開発を手掛けているのが、NXP Softwareだ。
NXP Softwareのアプリケーション部門で製品開発マネジャーを務めるJeremy Thomas Davies氏は、EE Timesに対し、「“リビングルームで見るHDテレビのような高精細な映像体験をモバイルで”をコンセプトに戦略を展開していく」と語る。
NXP Softwareは、映像を鮮明化するアプリケーション「CineXPlayer」を開発した。同社はCineXPlayerを「映像体験モジュール」と呼んでいる。ターゲットとする顧客は、サービスプロバイダ、タブレット端末メーカー、そしてユーザーだ。Davies氏は、「CineXPlayerを使えば、映像の解像度を上げて、モバイル機器でHDテレビのような画質を体験できる」と主張する。
NXP Softwareが目指すのは、モバイルプラットフォーム向けの特殊映像やディスプレイプロセッサといったハードウェアベースの製品ではなく、ソフトウェアをベースとした製品である。同社は、CineXPlayerのアルゴリズムを実行するには、モバイル向けアプリケーションプロセッサに搭載されるGPUの強化が必要だと考えている。
Davies氏は、「搭載されているのがImagination TechnologiesのGPUコアか、ARMの『Mali』かにかかわらず、マルチコアアプリケーションプロセッサは非常に処理能力が高く、映像の鮮明化や拡大/縮小以上のことを実現できる」と述べている。Davies氏は今後の計画について、「技術展開のロードマップは用意できている。あらゆる機能を盛り込んで一度に発売するのではなく、ユーザー教育を実施しながら、段階的に発表していく計画だ」と述べている。
ブレやコントラスト、色を補正するにはさまざまな方法がある。「例えば、伝送ルートを強化することでも、こうした問題に対処できる」と同氏は説明している。
NXP Softwareは2年前、「iPhone」の映像を鮮明にするアプリケーション(アプリ)「CineXPlayerHD」を発売し、同アプリのユーザー約100万人からさまざまな意見を集めてきた。「このような実績があるため、モバイルプラットフォームのベンダーへのIP(Intellectual Property)ライセンス供与も、円滑に進むと考えている」(Davies氏)。
Davies氏は、「ユーザーがどのような映像を“最高の画質”と感じるかは、主観的な問題だ。だが当社には、CineXPlayerのユーザーから得た貴重な情報がある。当社のエンジニアリングチームはこの情報を元に、ユーザーがCineXPlayerの映像修正機能を使ってどのような調整を行ったかというパターンを検出し、視聴に最適と考えられる映像の構築に取り組んできた」と述べている。
画質に合わせてディスプレイを進化させる取り組みは、全てのテレビメーカーが行ってきたことだ。しかし、モバイル機器のディスプレイとなると、話はまた違ってくる。どうすればスマートフォンやタブレット端末などで高精細な映像を楽しめるのか、それを再考しなくてはならないだろう。モバイル機器では、コストの他、消費電力の課題も大きい。
モバイル機器のディスプレイにおける映像処理技術の開発は、今まさに始まったばかりだ。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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