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東芝情報システム、スイッチング周波数“24MHz”のDC-DCコンバータを開発電源設計

東芝情報システムは、スイッチング方式のDC-DCコンバータとして、24MHzという超高速スイッチング周波数を実現したICの試作に成功した。スイッチング周波数6MHzのICに比べ外付け部品サイズや負荷応答時間を半分に削減できるという。

» 2013年07月12日 16時30分 公開
[竹本達哉,EE Times Japan]

 東芝情報システムは、スイッチング方式のDC-DCコンバータとして、24MHzという超高速スイッチング周波数を実現したICの試作に成功した。高速スイッチング動作により、ICに外付けするインダクタ、コンデンサに従来より半分のサイズのものが使用できるようになり、「電源回路の大幅な小型化が可能になる」(同社)という。

 スイッチング方式の電源は、オンとオフのスイッチを繰り返し、オンとオフの時間的な比率を調整して電力を変換する。オン/オフをスイッチする速度(スイッチング周波数)が速ければ、オン/オフの1周期当たりのエネルギーは小さくなる。そのため、スイッチングコンバータICから出力される電力を平滑化するコンデンサやインダクタなども小さなエネルギーを扱う容量、インダクタンスで済む。コンデンサやインダクタといった部品を小さくできるスイッチング周波数の高いDC-DCコンバータICは、小型化要求の強いスマートフォンなど電池駆動のモバイル機器で多く使用される。加えて、スイッチング周波数が高ければ、負荷変動に対する応答速度が速くなる、電圧変動が小さくドロップ電圧が小さいという利点もある。

これまでは最高でも6MHzから8MHz程度

 既に実用化されているスイッチング方式のDC-DCコンバータでは、スイッチング周波数が3MHzを超えるような製品が“高速”とされ、最大でも6M〜8MHz程度のスイッチング周波数のDC-DCコンバータが市販されている程度にとどまる。

 東芝グループ内外からの半導体受託設計を手掛ける東芝情報システムでは、長く蓄積してきた電源関連半導体技術をベースに、より高いスイッチング周波数を実現するICの開発に着手。今回、現在実用化されているICよりも3〜4倍程度高速な24MHzのスイッチング動作に対応したICの試作に成功した。

開発した試作ICのブロック図 (クリックで拡大) 出典:東芝情報システム

 試作したDC-DCコンバータICは、高スイッチング周波数のICに多く用いられるリップル制御と呼ばれる制御方式を採用する。DC-DCコンバータは、デバイス内部で出力電圧が常時、どのような状態にあるかを検知し、検知した状態に合わせてスイッチングなどを制御する必要がある。リップル制御では、出力があるしきい値を上回った(下回った)かを検知して制御するもので、比較的、単純な回路で制御回路を構成できる。そのため、高速動作に向く。ただ、シンプルな回路だが、DC-DCコンバータICのスイッチング速度を速めるには、この制御回路を高速動作させることが必要になる。

 東芝情報システムでは、同制御回路を構成するアンプやコンパレータなどに独自設計技術などを盛り込み高速動作させることに成功し、24MHzという高速スイッチングを可能にした。

試作したチップの主な仕様 出典:東芝情報システム

 試作したICは、入力電圧範囲2.3〜5.5V、出力電圧1.2〜1.8Vという降圧型DC-DCコンバータで、出力電流は250mA。24MHzスイッチングにより、インダクタンス値220nHのインダクタ、2.2μF容量の出入力コンデンサが使用できるとする。6MHz動作のDC-DCコンバータICでは、1μHのインダクタ、4.7μFの出入力コンデンサが必要だったため「各外付け部品のサイズを50〜60%削減できる」とする。負荷応答時間についても「6MHz品に比べ半分以下の高速応答を実現した」(同社)。

試作したICによる外付け部品縮小のイメージ (クリックで拡大) 出典:東芝情報システム

 高速スイッチングは、多くの利点がある一方で、スイッチング動作による自己電力消費が増大し、結果として変換効率が低下するという欠点がある。試作デバイスでは、最大変換効率が85%を下回り「決して、効率が良いとは言えない」と効率面での改善の余地は残る。ただ、試作デバイスはパッケージに寄生損失の大きいQFPを用いたことも効率悪化の要因となっていて、「1.2×0.8mmサイズのチップサイズパッケージを用いれば、5%程度の効率改善が見込めることをシミュレーションで確認している」という。

今回の技術をベースに「さまざまなカスタムニーズに応えたい」

 東芝情報システムでは、「24MHzという高速スイッチングを求める用途が現状、あるかどうかは不透明だが、サイズ縮小や高速負荷応答を強く求める用途を探したい。また、24MHzまでスイッチング周波数を高めることのできる今回の技術をベースに周波数重視、効率・応答性能重視など顧客ニーズに沿ったカスタム電源IC設計サービスを提供し、ビジネス規模拡大につなげたい」と言う。同社では、より効率を重視したスイッチング周波数16MHz版の試作も行っている他、効率向上に向けた技術開発を継続していく方針。

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