アップル(Apple)は長い間、中国市場でのシェア拡大を狙ってきた。廉価版である「iPhone 5c」の発表で、中国最大手の通信事業者であるChina Mobileの販売網を獲得し、中国市場にiPhoneを浸透させることができるだろうか。
Appleは2013年9月10日、「iPhone」の新機種を2種類発表した。「iPhone 5」の後継機種である「iPhone 5s」と、廉価版の「iPhone 5c」である。
iPhone 5cは、Appleの「A6」プロセッサを搭載。5色のカラーバリエーションで、販売価格は、16Gバイトモデルで99米ドル、32Gバイトモデルで199米ドルである(2年契約時)。
iPhone 5sは3色で展開される。「A7」プロセッサを搭載し、処理速度の向上をうたう。「iOS7」は指紋スキャナを搭載し、タッチするだけでロック解除が可能だ。
2機種のうちより重要なのは、低価格のiPhone 5cの方だろう。iPhone 5cは、Appleの中国戦略の要となる。
Appleは2013年9月11日に中国の北京でも、新型iPhoneの発表会を開催した。
Appleは、中国の通信事業者の最大手で、7億人を上回る契約者を抱えるChina Mobileの販売網の獲得を切望している。世界で最も成長率の高い中国のスマートフォン市場において勢力を拡大するためだ。契約に関する両社の交渉は、約1年間続いていると言われる。
China Mobileが積極的にインフラ整備を進めるLTE規格「TD-LTE」に、iPhone 5cは対応した。だが、China MobileがiPhone 5cを販売するかどうかは、11日のAppleの中国での発表会では、明らかにならなかった。
中国独自の3G規格である「TD-SCDMA」とTD-LTEの両方に、Appleが対応したことで「やりすぎだ」という意見も出てくるかもしれない。しかし、両規格に対応しなければ、Appleにとって大きな失敗になる可能性があった。
China Mobileは、2013年はLTEネットワークの構築に70億米ドルを投じる計画だという。これは同社が誇大に発表しているわけではなく、China Mobileは実際にLTEネットワークの構築を急ピッチで進めている。DSPコアIPベンダーのCEVAでマーケット部門のバイスプレジデントを務めるEran Briman氏が最近、EE Timesのインタビューに対して、「China MobileはTD-LTEを早急に展開し、3Gを超えるネットワークを構築したいと考えている」と語った。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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