膨らみ続ける携帯電話補助金が、中国の通信市場に影を落とし始めているという。そのような中、中国独自の3G規格であるTD-SCDMA対応の「iPhone」が登場するかどうかに注目が集まっている。
中国の通信市場に苦悩の兆しがみえている。中国の無線通信キャリアでは、膨らみ続ける顧客への携帯電話補助金が利益をむしばんでおり、加入者1人当たりの平均売り上げ(ARPU:Average Revenue per User)を増やそうと苦心している。
一方、顧客数ベースで世界最大規模を誇る通信キャリアである中国のChina Mobileが、近い時期にAppleの「iPhone」の取り扱いを開始するのではないかという点に注目が集まっている。Qualcommが、中国独自の3G(第3世代)規格であるTD-SCDMA(Time Division Synchronous Code Division Multiple Access)に準拠したチップセットを、2012年後半に発表するといううわさもある。TD-SCDMAに対応するiPhoneが登場するタイミングについては議論の的になっているが、その一方で、China MobileはTD-LTE対応の端末を2013年に発売できるよう、本腰を入れているとの報道もある。
China Mobileは2012年8月、2012年上半期のEBITA*1)が、前年同期比で0.9%減となる1230億元(194億米ドル)であったと発表した。
*1)EBITAとは、税引き前の利益に、支払利息や減価償却費を足したものである。
中国の無線通信キャリアでは最小規模のChina Telecomも、2012年8月に決算発表を行った。それによると、2012年上半期の純利益は、前年同期の96億2000万元(15億2000万米ドル)から8.3%減少し、88億1000万元(13億9000万米ドル)だった。売上高については、前年同期から14.8%増加し、1380億200万元(218億米ドル)となった。
つまり、中国の通信キャリアの収益は減少したことになる。
こうした不穏な動きの原因は何だろうか。
要因の1つとして考えられるのは、過去半年以上にわたり、China Mobile、China Unicom、China Telecomの通信キャリアの間で、価格競争が激しくなっていることだ。さらに、携帯電話機の補助金も3社のARPUを圧迫している。
iPhoneを取り扱うと、中国の通信キャリアのコスト的な負担はさらに増す。China Telecomは報道発表資料の中で、「iPhoneのマーケティング費用は収益性を押し下げる」と明確に述べた。
AppleはTD-SCDMAに対応したiPhoneを製造していないため、今のところChina MobileではiPhoneを取り扱っていない。
先に述べた通り、QualcommがTD-SCDMAに準拠したチップセットを発表するとうわさされていることから、China Moblieが、同規格対応のiPhoneを出す可能性は否定できない。だが一方で、China MobileはTD-LTE端末の発売に注力しているので、「Appleは、China MobileからiPhoneを出すことにさほど興味がない」とみている業界関係者もいる。
China Mobileは、China UnicomやChina Telecomに対する競争力を高めるべく、2012年後半に携帯電話機の補助金を増額する計画だという。China MobileのCFO(最高財務責任者)であるXue Taohai氏によると、同社は2012年前半に、携帯電話機の補助金として120億元(19億米ドル)を使用した。年間を通しての補助金は、当初の計画の210億元(33億2000万米ドル)よりも多い260億元(41億米ドル)に上る見込みだという。
3社が目指しているのは、より高額なハイエンド機種を求める顧客を取り込み、サービスで売り上げを伸ばすことである。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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