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» 2013年10月22日 19時00分 公開

優秀な技術者がいるから「競合には追い付かれない」リニアテクノロジー 会長 ロバート H.スワンソン氏(2/2 ページ)

[竹本達哉,EE Times Japan]
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自動車、産業機器重視の戦略「変える必要はない」

EETJ 自動車、産業機器への注力は今後も変えないのか。

スワンソン氏 まだまだ自動車、産業機器でのアナログ半導体の需要は伸びる。自動車は、今後もエレクトロニクス化が進み、アナログ半導体の役割はますます大きくなる。産業機器に関しても同様だ。しばらく、自動車、産業機器にフォーカスする戦略を変える必要はない。

EETJ 自動車、産業機器の売り上げ比率はさらに高まるのか。

スワンソン氏 当然、高まるだろう。全社レベルでは、現状40%を超えている産業機器向けの比率も高くなり、2013年6月期で18%だった自動車向けも、既に直近の四半期(2013年7〜9月期)では、19%に高まっており、いずれ25%ぐらいにはなるだろう。約7割が自動車、産業機器向け、残り3割が通信機器、(サーバ/ストレージ機器などの)コンピュータ、宇宙航空向けなどで構成することになるだろう。もちろん、残り3割にも民生機器向けは含まれない。

売上高20億米ドル達成は「決して難しくない」

EETJ 20億米ドル達成を将来的な目標の1つに掲げているが、2012年6月期売上高が12.6億米ドル、2013年6月期売上高は12.8億米ドルだった。ここ2年ほどの売上高成長は、一時期に比べ鈍化しているようにも見える。

スワンソン氏 短期的には、さまざまな要因から売り上げに波が生じるが、長期的に見れば、半導体市場は着実に成長していく。ここ2年ほどの売り上げ成長が鈍化しているようにみえるかもしれないが、私はそうは思っていない。

 2009年はリーマンショックの影響を受けて大きく売上高を落としたが、その際も当社は、十分な財務基盤があり、従業員の解雇や工場の売却/閉鎖といったことを一切行わなかった。だから、リーマンショックからの回復局面で、競合他社の2倍となる急回復を果たすことができた。

 明確な数値目標を掲げた経済政策を各国政府が打ち出さない苦しい状況の今でも、ここ数四半期連続で前四半期比3〜4%の増収を達成してきた。今後も、2〜3%の成長は持続できるだろう。

 世界のアナログ半導体市場規模は400億米ドル程度とみている。そして、リーマンショック以降、この市場規模は拡大していない。しかし、われわれが目標にしているのは、この400億米ドルのうち、たった20億米ドルだ。その達成は、決して難しいとは思わない。

「競合には追い付かれない」

EETJ 自動車、産業機器市場には、競合他社の多くも注力をしてきている。

スワンソン氏 競合が追従してきているのは、確かだ。しかし、われわれは、7〜8年前から先行して走り続けている。競合には追い付かれない。

EETJ 競合に対し優位性を維持できる背景は何か。

スワンソン氏 アナログ半導体製品のデザインサイクルは、とても長くなってきている。10〜15年前は1〜2年周期だったが、現在は3〜5年周期になった。しかも、10〜15年前は優秀なエンジニアが1人で設計、開発できたが、今は2人以上、多ければ5〜6人のチームで設計、開発しなければならず、より複雑、高度になっている。

リニアテクノロジーのエンジニアの巨匠、熟練者を指す“グル”の1人で、日本人の河本篤志氏が開発を手掛けた逐次比較型A-Dコンバータ。ここ5年展開してきたデザインプロジェクトの成果の1つ。

 リニアテクノロジーには、275人もの優秀なデザインエンジニアがいる。優秀なエンジニアの力が、リニアテクノロジーの最大の競争力だ。それに加え、5年ほど前からデザインプロジェクトをスタートさせ、自動車、産業機器市場向けを中心にした新規性、革新性の強い製品開発を積極的に行ってきた。その一例が、μModule*)やPOE++、バッテリマネジメントシステム(BMS)用IC、デジタル電源、逐次比較(SAR)型A-Dコンバータ、RF製品だ。これらはいずれも、5年前の売上高はゼロに等しかったが、現在では各製品とも5000万米ドルを超える年間売り上げ規模に達した。これらは、まだまだ売り上げ成長、シェアアップが狙える分野であり、プロジェクトは継続して実施していく。

*)アナログICの他、各種受動部品を半導体パッケージに集積したモジュール製品群。DC-DCコンバータICやコンデンサ、インダクタなどをワンパッケージ化した電源モジュールの他、信号処理系モジュールなどもそろう。

優秀なエンジニアが集まる土壌

EETJ 全ての競争力の源泉となる優秀なエンジニアを確保できている理由は。

ポスターに描かれた現在のリニアテクノロジーの“グル”を紹介するスワンソン氏

スワンソン氏 まず、優秀なエンジニアは、シリコンバレー、カリフォルニア州以外にも多くいるということ。われわれは、世界14カ所にデザインセンターを持ち、各地の優秀なエンジニアの受け皿を作っている。ただ、優秀なアナログエンジニアは、米国に集まってくる傾向が強く14カ所のデザインセンターのうち10カ所は米国に作っている。さらに優秀なアナログエンジニアを輩出する大学も限られ、それらの限られた大学から15年程前から、研修生を受け入れるインターンシップを実施するなど連携も深めている。

 また、Apple創業者の故スティーブ・ジョブズ氏は、「いくら優秀なデザイナー(設計者)がいても優れたイノベーター(革新者)がいなくてはならない」と言っていたのと同じように、優れたエンジニアが多くいるだけではいけない。創業来、30年以上の経験者である“グル”(熟練者、巨匠の意)が、エンジニアを教えるという仕組みが出来上がっている。

 そして何より、30年前から当社の“グル”は、エンジニアとして多くのイノベーションを起こし、名声をはせてきた歴史がある。多くのアナログ半導体メーカーがある中でこの伝統に魅力を感じ、優秀なエンジニアの多くがリニアテクノロジーを選択するようになっている。

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