「最も難しいのは変動費の削減。変動費は必ず上がるものであり、(資材などを)買いたたくというようなことではなく、思い切った手が必要になる。ルネサスをみると、(資材などの)標準化、共通化がなされていない。その原因は、まだまだ親会社3社(NEC、日立、三菱)からの影響が残っている」と社内体質の改善を含めて、変動費抑制に取り組むことを示唆した。
固定費については、2013年8月に内容を見直した生産拠点再編策を進めていく(関連記事:鶴岡工場の閉鎖を決定したルネサス作田会長、「まだ人・モノが多い」)。また、新たに設計開発拠点の統合による効率化にも言及。「設計開発拠点は、ばらついているので、もう少し集結した方がスムーズになる。本社を置くビルも16年3月に立て替えの計画があり移動しなければならず、NECから借りている拠点や老朽化している拠点もあり、それらも考慮して、集約を考えていく」とした。設計開発拠点の集約に伴う人員整理については「考えていない」と否定した。
製品構成の見直しについては、「効率を考え、生産中止も行う。生産中止を行なわず(顧客と)心中すれば、かえって顧客に迷惑を掛ける」と言明した。また、注力製品の取捨選択については、「ルネサスはこれまで、集中と選択の選択は人一倍やってきたが、集中が弱く、下手くそ」とこれまでの対応を切り捨てた。その上で「結局は得手不得手の得手に集中するが、投資先として、私個人が強く固執しているのが、離れ小島のような“点”のものには投資しないということ。点と点がつながり、方向性のある“線”のものや、その線がつながり“面”になったものに投資する。投資も、ビジネスも立体であり、立体的だと自分なりに納得感を得たものに投資していく」と述べた。
事業戦略面では、作田会長/鶴丸哲哉社長体制になってから一貫して強調している個別の半導体製品だけでなく、複数の製品やソフトウェア、サービスなどを組み合わせて提案するキット/プラットフォーム提供型のビジネスモデルへのシフトを掲げる。「市場、顧客から離れかけているのは、ハードウェア、製品から価値を見過ぎているから。アプリケーションからの価値を見なければならない。例えば、自動運転車に熱心な自動車メーカーもあるが、自動運転車がすぐに普及するとは思えない。その自動運転車のためのハード、ソフトに注力すれば無駄になる。そういう意味でも、アプリケーションの広がりを見なければならない」と説明する。アプリケーション志向のビジネスモデルへシフトするため、組織体制も変革する。従来の製品別の組織体制を、アプリケーション別の組織体制に11月1日付で改める。
販売、マーケティング部門も体制を見直す。11月1日付で、元フリースケール日本法人社長の高橋恒雄氏が執行役員常務兼CSMO(最高販売マーケティング責任者)/グローバル・セールス・マーケティング本部長に就任する。高橋氏の登用について作田氏は、「社内にも有力な人材はいるが、高橋氏は30年以上外資系企業に勤めた知見があり、多少違う経験を持つ人材を入れることで、グローバルのビジネスを強化していくことが狙い」とした。
事業のグローバル化では、欧州法人、米国法人の権限を強め経営スピードを速める。両法人の社長は、本社執行役員を兼ねる。アジア地域についても、「世界人口の半数を占める地域であり、経済成長も見込める。最も経済的に魅力ある地域の隣にルネサスはいる。その利点を生かし、ビジネスを広げたい。特にASEAN地域を重視する」と語った。
「ルネサスの社員は当事者意識が低い」とする社員の意識改革に関して作田氏は、「ルネサスの中には“コスト”はなく、全てが“投資”というようにしたい。鉛筆1本でも投資であり、何のために投資するのかという意識付け。コストを投資というような発想に変えなければならない」とした。
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