富士通は、2016年度までの経営方針説明会を開催し、サーバ/SI事業での売り上げ拡大を狙う一方で、PC/携帯電話機事業は現状のビジネス規模を維持していく方針を示した。
富士通は2014年5月29日、2016年度(2017年3月期)までの経営方針に関する説明会を開催し、SI事業やサーバなどシステムプラットフォーム事業で構成する「テクノロジーソリューション」での売り上げ成長により2016年度に営業利益2500億円達成を目指す中期目標を明らかにした。PCや携帯電話機などの「ユビキタスソリューション」と「デバイスソリューション」に関しては、現状の事業規模を維持する方針。
この日、公表した2016年度中期経営計画で掲げた数値目標は2013年度実績1472億円だった営業利益を2016年度に2500億円、純利益も同1132億円から1500億円以上に引き上げるとの数値のみ。売上高に関しては、テクノロジーソリューションでの売上高目標(3兆8000億円、2013年度は3兆2430億円)の開示だけにとどめた。
全社売上高目標を開示しなかった理由として社長の山本正已氏は、「ユビキタスソリューション、デバイスソリューションについては、まだ成長に向けた整理整頓が終わっておらず、最終的な売り上げの判断ができないため」と説明した。その上で、「(ユビキタス/デバイスの両事業業績は)横ばいの予想で、(中期経営計画を)作った」とした。
主にPCや携帯電話機で構成するユビキタスソリューションに関して山本社長は、「機器単体ビジネスの集合体だが、単体ビジネスに関してはこれからはイーブンだろう。しかし、ユビキタスソリューションに分類するか、テクノロジーソリューションに分類するかは分からないが、機器上のアプリケーションやサービスといった関連ソリューションは伸びる」との見方を示した。そして、携帯電話機、PCともに現状の生産規模を維持していく方針を示し、「地産地消の方針を継続し、生産体制を維持する。島根(=島根富士通)でのPC生産も続け、IoE(Internet of Everything)の時代にはセンサー端末なども島根で作っていく」と明言した。
デバイス事業に関しては、「2013年度に着実な構造改革が行えた」とし、マイコン/アナログ半導体事業の売却(関連記事:Spansion、富士通のマイコン/アナログ事業買収を完了)やシステムLSI事業における設計開発部門のパナソニックとの統合についての大枠合意(2014年10〜12月実施予定、関連記事:富士通とパナソニックのLSI事業統合、政策投資銀の200億円出資を得て年内実施で合意)などを終えたことを評価した。ただ、システムLSIの製造拠点である三重工場(三重県桑名市)に関しては、2014年2月にファウンドリなどのパートナーとともに半導体製造専門会社を設立し移管する方針を示しているが、パートナーとの交渉が難航しており、詳細が決定していない。この状況について山本氏は、「半導体事業の構造改革は中途半端だと思われているだろうが、社内的には終わっており、あとは外部との検討のみという状況だ。(システムLSIに関する)設計と製造を別個にしたわれわれの思い描く改革を2014年度の中で仕上げる」とした。
日本政策投資銀行からの出資、融資を受けて実施するパナソニックとのシステムLSI設計開発部門統合新会社について山本氏は、「得意分野に集中し、(工場を持たない)ファブレス半導体メーカーへの事業転換を図る。そして、独立した企業としてIPO(新規株式公開)を目指す」とした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.