それでは、注目講演を具体的にご紹介しよう。セッション15(2月24日火曜日午後1時30分開始予定)ではまず、中国と台湾のMediaTekが共同発表する、信号対(雑音プラス歪み)の比率(SNDR:Signal to Noise and Distortion Ratio)が90.4dBと高いA-D変換技術が注目される(講演番号15.2)。変換回路のアーキテクチャは時間連続型のデルタシグマ(ΔΣ)変調器で、ループ遅延(ELD)を独自の方式で補償する。消費電力は4.5mWと低い。
時間分解能が1.17psときわめて高い時間ディジタイザ(TDC:Time to Digital Converter)も、要注目の開発成果だ。韓国のSamsung Electronicsが発表する(講演番号15.5)。2の14乗個(1万6384個)の遅延素子を内蔵し、信号遷移タイミングのばらつきを利用して統計的な処理を実施し、100Mサンプル/秒で1.17psの時間分解能を達成した。プロセス変動、電圧変動、温度変化に対して安定に動作する。電源電圧は最小0.6Vである。
セッション26(2月25日水曜日午後1時30分開始予定)では、FOM(figure of merit)が6.9fJ/(変換ステップ)と電力エネルギー効率がきわめて高いA-D変換技術の評価が高い。米国のUniversity of Michiganと韓国Samsung Electronicsの共同発表である(講演番号26.1)。サンプリング速度は50Mサンプル/秒、分解能は13ビット。消費電力は1mWと低い。
有効ビット数(ENOB:Effective Number of Bit)が9ビットで、サンプリング速度が1.6Gサンプル/秒と高速なA-D変換技術も注目される。韓国のKAISTとSamsung Electronicsの共同研究成果である(講演番号26.4)。上位ビットをフラッシュ型でA-D変換し、下位ビットをインタリーブ逐次比較(SAR)型でA-D変換する、「FATI(Flash-Assisted Time-Interleaved) SAR」と呼ぶ方式を改良している。バックグラウンドでオフセットとスキューを較正する機能を備える。
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