IBMが、機械学習によるデータ分析に強みを持つAlchemyAPIを買収したと発表した。これにより、IBMの人工知能(AI)「Watson」には、強力な画像分析の能力が加わるという。Watson関連の事業は、2018年には500億米ドル規模に成長する見込みだという。
2015年3月4日(米国時間)に、機械学習によるデータ分析を手掛けるAlchemyAPIを買収したと発表したIBM。これにより、人工知能(AI)「Watson」は、深層学習(deep learning)も行えるようになった。AlchemyAPIの強みは、ビッグデータを深く掘り下げて、重要な関連性を見いだすことにある。つまり、(Watsonは)熟練したコンサルタントのような洞察力を身に着けられるかもしれない、ということだ。Watsonは既に、干し草の山の中(つまりはビッグデータ)から針を探し出すような能力を備えていたが、IBMによると、今後はビッグデータに埋もれた“全体像”を理解する能力が大幅に向上する見込みだという。
IBMのWatson部門でバイスプレジデントを務めるSteve Gold氏は、EE Timesに対し、「AlchemyAPIの技術は、情報ヒエラルキーを特定し、人々、場所、そのデータの中に存在するモノとの間の関連性を理解するWatsonの能力をサポートするために使われる。特に、ロングテールの領域やその他のオントロジーといった分野で有用である。さらに、Watsonが、画像データから何かを認識したり判別したりするような、視覚的な能力の向上も見込める」と述べている。
Watsonは既に、IBMのビジネスモデル全体を変えるほどの成功を収めており、同社は伝統的なハードウェアの進歩よりも知識ベースのサービスを重視するようになった。AlchemyAPIの深層学習エンジンとの統合を通じて、IBMはビッグデータのデータマイニング市場でのシェア向上を目指す。さらに、同社のコグニティブ・コンピュータから“真のAI”を生み出すことも狙っている。
Gold氏は「IBMは現在、Watsonの技術および開発プラットフォームの両方を拡大すべく、取り組みを続けている。こうした取り組みは、AlchemyAPIのような企業の買収や、IBM Researchが実現する有機的なイノベーション、あるいはWatson向けアプリを既に7000以上開発した何千もの開発者を通じて進められる」と説明した。
買収により、AlchemyAPIの4万人の開発者が、IBMのWatsonアプリ開発チームに加わる。AlchemyのAPI(Application Programming Interface)は、Watson用のAPIと重複するものもあるが、多くの場合はWatsonのツールキットに加えられるという。ツールキットに加えられるAPIとして、言語分析、テキスト認識、視覚認識、画像検出/分類/抽出、感情分析などが挙げられるという。
IBMは、WatsonとAlchemyが統合することで、「スマートシステムの新時代」が到来し、銀行、保険会社、小売業、教育機関といった組織から、医師や建築士、金融アナリストなど個人の専門家まで、ビッグデータから何らかの意味を引き出せるようになる、と述べている。米国の会計事務所であるDeloitteによると、WatsonとAlchemyAPIに関連したビジネスは、2018年には500億米ドル規模に成長する見込みだという。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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