ASMLが、EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置を15台、“米国顧客企業の1社”に納入すると発表し、業界の観測筋の間でさまざまな臆測を呼んでいる。複数の情報筋が、この顧客企業がIntelではないかという見方を示している。
ASML Holdingsは、米国の顧客企業1社との間で、EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置を15台納入する契約を締結したと発表した。アナリストたちはこの知らせに対し、さまざまな反応を示している。装置を購入した顧客企業はIntelではないかとする見方もあるが、契約の内容などについては明らかになっていない。
EUVリソグラフィ装置の開発に向けた取り組みは、これまで数十年間にわたって進められてきた。それでもまだ、最先端の半導体チップの製造に必要とされるスループットを実現するには至っていない。光源の出力が、まだ不十分だからだ。ASMLはこれまでに、さまざまな性能の向上を達成したと発表してきたが、最も新しい成果をもってしても、まだ目標とする能力には達していない。
IntelのフェローであるMark Bohr氏は、米国カリフォルニア州サンフランシスコで2014年9月9〜11日に開催された同社の開発者向け会議「Intel Developer Forum 2014(IDF 2014)」において、「EUV装置に関しては、スループットや信頼性が不十分であるため、まだ準備が整っていない状況にある」と話している。
また同氏は、IDF 2014の会場で、「Intelは、EUV装置を使わずに、高いコスト効率で7nmチップを製造可能な手法の開発にめどを付けることができた」と述べている。同氏はそれ以前にも、10nmチップに関して同じような内容を語っていたことがある。しかしIntelは、7nm/10nmのいずれのプロセス技術についても、まだ詳細を明らかにしていない。
複数の情報筋が、「ASMLが自社のプレスリリースの中で、今回のEUV装置の納入先として言及した“米国の既存の顧客企業”は、Intelではないか」とする見方に同意している。しかし、あるアナリストの推測によると、今回販売契約を締結した15台のうちの10台は、2017年以降に納入される予定だという。同アナリストは匿名を条件に「ASMLの15%の株式を保有しているIntelが、今回の販売契約によって、ASMLの株価を吊り上げようとしたのではないか」と指摘する。
一方、もう少し前向きな捉え方をするアナリストもいる。PC関連技術の記事やホワイトペーパーの発信を手掛けるReal World TechnologiesのDavid Kanter氏は、「Intelが10nmチップでEUV装置を使うと考えると、購入のタイミングが遅すぎる。7nmチップであれば、妥当だと言える」と述べている。
Kanter氏は、「ASMLはこれまで、1〜2台のEUV装置を実験的な用途として受注する程度だった。しかし、今回の受注規模は、EUV装置が今後、量産体制へと移行していくことを示すため、ASMLにとっては強力な信任票を獲得することになる」と述べる。さらに同氏は、「今回EUV装置を購入したのがIntelだとすると、近い将来、Samsung ElectronicsやGLOBALFOUNDRIES、TSMCなどの競合メーカーがこれに影響を受ける可能性がある」と付け加えた。
TSMCは2015年初めに、ASMLのEUV露光装置「NXE:3300B」で1日当たり1000枚のウエハーを露光処理することに成功したと発表した。このNXE:3300Bは、80Wの光源を確保している。
193nmリソグラフィ(波長が193nmのレーザーを使用したリソグラフィ技術)システムでマルチパターニングを行うという方法は、膨大なコストがかかる。EUV技術が、それに代わる技術の“第1候補”であることは間違いない。だが、EUV装置では、光源の出力不足に加えて、レジスト、マスク検査、ペリクル(保護カバー)など、いくつもの課題に直面している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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