IHSのコネクテッドホーム部門で主席アナリストを務めるMerrick Kingston氏はEE Timesに、Alliance for Open MediaはGoogleの戦略をお手本にしていると語った。同氏は、「Googleはコーデック技術『VP9』を、オープンでロイヤルティーフリーと位置付けているが、Alliance for Open Mediaが目指す方向もこれとほぼ同じだ」と述べている。
市場には既にGoogleが開発したVPxシリーズのコーデック技術があるとも言えるわけだが、これについてはどうなのだろうか。Kingston氏によると、ほとんどのベンダーやサービスプロバイダは、ビデオコーデック技術に関する長期的な戦略を、Google1社だけの手に委ねることには難色を示しているという。「Alliance for Open Mediaは、VPxのように、経済面での魅力があるだけでなく、より透明性のある技術連携をビデオコーデック規格も、市場にもたらしたいと望んでいる」(同氏)。
こうした目標は称賛に値する。だが一部のアナリストは、Alliance for Open MediaがMPEGが標準化した既存技術に関する特許を侵害することなく、新しいビデオコーデック技術を開発する準備が整っているのかどうかに疑問を呈している。
Envisioneering GroupのリサーチディレクタであるRichard Doherty氏は、Alliance for Open Mediaの創設は(業界にとって)大きな出来事だとしながらも、「H.265関連の特許を侵害しないように技術開発を進めるのは、不可能とは言わないまでも、かなり難しいのではないか」と推測している。
さらに、ロイヤルティーフリーのビデオコーデック技術には、「過去に一度もスムーズに成功したことがない」という厳しい現実も待ち構えている。匿名を希望するあるアナリストは、「かつてMicrosoftはWMV9というビデオコーデック技術を開発し、SMPTE(米国映画テレビジョン技術協会)の規格という形で、世に出したことがあった。これもロイヤルティーフリーを約束していたが、結局Microsoftは、MPEG LAとパテントプールを形成せざるを得ない状況になってしまった。いくつかの技術が、H.264/MPEG-4 AVCの特許を侵害するとみなされたからである」と説明している。「同じことはGoogleのVP8でも起きた。Googleは、VP8をロイヤルティーフリーで提供する際に、法律的には何の問題もない事を示すべく、AVCの特許関連でMPEG LAと何らかの契約を結んだとされている」(同氏)。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.