Intelはこのほど、CDMAモデムに関する技術資産を台湾Via Telecomから購入した。CDMA技術を新たに手に入れたことは、何を意味するのだろうか――。
「Intelが最新のモデム技術分野において展開している、保護的投資、あるいは先制攻撃とでも呼ぶべき投資戦略は、今後モバイル分野における生き残りをかけていく上で、重要なカギとなるだろう」。
IntelのCEO(最高経営責任者)であるBrian Krzanich氏は2015年10月13日、同社の2015会計年度第3四半期の業績発表の場でこう語った。また同氏は、「激しい競争が繰り広げられているモデム市場において重要なのは、プレーヤーの数ではなく、最先端の技術レベルを常に維持できるかどうかだ」と語っている。
では、従来のモデム技術に関してはどうなのだろうか。
CDMAはもともと、Qualcommが開発した技術だ。これまでIntelのモデム事業には、CDMA技術が完全に欠落していたが、その心配はもうなくなった――。
台湾の台北市に拠点を置くVIA Telecomが2015年10月1日、同社の資産の一部をIntelに売却することをひそかに発表した。その中には、CDMA関連の資産も含まれている。
米国の市場調査会社であるForward Conceptsでプレジデントを務めるWill Strauss氏は、「CDMAは、Verizonの巨大ネットワークを使用する全てのスマートフォンに不可欠な技術だ。また、台湾や韓国の一部のネットワークの他、China Telecomにとっても、CDMAとLTEは欠かせない技術である。Intelが今後、LTEモデム市場における主要なプレーヤーとしての座を獲得するためには、CDMA技術が不可欠だ」と述べている。
IPコアベンダーのCEVAの広報担当者によると、Via TelecomのCDMAモデムは、CEVAのDSPコアをベースとしているという。また、Intelのモデムチップは、2011年1月にInfineonから取得した2G/3Gモデムがベースであり、CEVAのDSPコアを採用している。
CEVAの広報担当者は、今回のVia TelecomとIntelの取引きについて問われると、「Via Telecomはこれまで、モデム分野に多大な力を注いできた。またVia Telecomは、アプリやSoCの分野でもある程度の実績を培ってきたが、これらがIntelにとって有用なのかどうかは不明だ。今回のVia TelecomとIntelの取引の主な目的は、Intelの半導体チップにCDMA/EV-DOスタックを追加することではないだろうか」と述べている。
ここで注視すべき重要な点は、CDMAを始めとする技術に対応した“世界標準のモデム”を手掛けているメーカーが、QualcommとMediaTekの2社だけであるということだ。Marvellは、5つのベースバンドを備えたモバイルSoCを手掛けているが、CDMAはサポートしていない。
Strauss氏は、「MediaTekは、同社のLTE製品シリーズにおいてVia TelecomのCDMAモデムをいち早く採用したという点で、非常に賢明だったといえる。これによりMediaTekは、China Telecomのデザインウィンを獲得するという大きな利益を得ることができた」と説明する。
Intelは、VIA Telecomとの取引きによりCDMAへの対応は完了した。では、Intelはこの先、何をすべきだろうか――。
Strauss氏は、「以前の市場予測では、2016年に投入される新型iPhoneにIntelのLTEモデムが採用されるのではないかとされていた。その当時は、iPhoneでもCDMA対応が必須となることについて考慮されていなかったが、このような予想は今後、また復活することになるだろう」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.