ユーブロックスジャパンは、V2X(Vehicle-to-everything)通信向けに、IEEE 802.11p(5.9GHz帯)に対応したモジュールを「第1回 IoT/M2M展」で展示した。
スイスu-bloxの日本法人であるユーブロックスジャパンは、「第1回 IoT/M2M展」(2015年10月28〜30日、幕張メッセ)で、V2X(Vehicle-to-everything)通信向けの通信モジュール「THEO-P1」を展示した。IEEE 802.11pに対応しているもので、同年10月5日(スイス時間)に発表されたばかりである。なお、THEO-P1は、まずは欧米向けとして5.9GHz帯をサポートしているが、日本市場からの要求があれば、700MHz帯に対応することも技術的には可能だとしている。
THEO-P1は、NXP Semiconductors製のIEEE 802.11p対応通信チップに加え、パワーアンプ、電源管理IC、キャパシタ、水晶発振子などを1つのモジュールに搭載したことと、外形寸法が約30×40mmと小型なことが特長である。u-bloxの短距離無線プロダクトセンター長を務めるHerbert Blaser氏は、「ディスクリートでV2X通信を実現しようとすると多数の部品が必要になり設計が複雑になるが、モジュール化することで、設計がより簡単に、シンプルになる」と述べ、「競合品に比べ、ベンチマークテストで最も高い性能を示した」と強調した。具体的には、1000m以内であれば、最大時速250kmで移動する自動車間でも問題なく通信できるという。V2X通信の本格的な導入は「あと数年かかるとみている」(Blaser氏)とするも、u-bloxは自動車業界の次なるトレンドであるV2X通信市場に向けて、早い段階で製品を投入したことになる。IEEE 802.11p対応の通信モジュールはまだ少ない。「当社は、最も早く同モジュールを製品化したメーカーの1つだ」(同氏)。
u-bloxのV2X関連技術では、THEO-P1の発表の他にもう1つ大きな動きがあった。コネクテッドカー向けの無線技術や双方向型高度道路交通システム(Cooperative-ITS)を手掛けるオーストリアのCohda Wirelessとの提携関係を強化し、同社のV2X向け無線モジュール「MK5」のライセンスを引き継ぐことになったのである。Blaser氏は、「もともとCohda Wirelessとは、V2X通信に欠かせない測位技術において協業してきた。Cohda Wirelessは、IEEE 802.11p向けの通信スタックなどソフトウェア開発のみに注力すべく、無線通信モジュールのIP(Intellectual Property)の供与先を探していて、当社はそれに興味を持ったため、IPを引き継ぐことになった」と説明する。
u-bloxは、GPSやGLONASSなどに対応した測位用チップ・モジュールに強みを持つ。約5年前にはセルラーモジュール事業を開始した。さらに、2014年5月にスウェーデンconnectBlue、同年12月にドイツLesswireの近距離無線モジュール事業を相次いで買収し、近距離無線モジュール事業を開始している。同事業はu-bloxでは新しいものだが、Blaser氏によると、測位用やセルラー向けで培ったモジュール化の技術を生かし、1年ほどでTHEO-P1の発表にこぎ着けたという。
ユーブロックスジャパンはTHEO-P1の他、Wi-Fi(2.4GHzおよび5GHz)とBluetooth Low Energy(BLE)の両方を搭載したモジュール「ODIN-W262」も展示した。こちらは、産業分野や医療分野をターゲットにしたもので、医用電気機器のEMC規格であるIEC 60601-1-2に準拠している。
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