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Qualcomm/NXPの合併に立ちはだかる米中政府の壁(後編)M&Aの審査、状況が読みにくい(2/2 ページ)

» 2017年02月13日 10時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]
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MOFCOMの常とう手段

 NXPがMOFCOMと交渉するのはこれが初めてであるはずはない。2015年、NXPはFreescale Semiconductor買収の条件として、まずRFパワー事業を中国のJAC Capitalに18億米ドルで売却したのだ(関連記事:世界第2位のRF企業「Ampleon」が始動)。2016年には、汎用ロジック/ディスクリート事業を中国の投資家コンソーシアムに売却することを発表。これは、2017年2月からNexperiaとして営業を開始している(関連記事:NXP、汎用ロジック/ディスクリート事業売却)。

 MOFCOMによる審査の対象となるM&Aではお決まりのプロセスのようにも思えるが、実はNXPは、実際に行動を起こす前に2度も申請しなくてはならなかった。

 RFパワー事業および汎用ロジック/ディスクリート事業の売却以外に何か条件があったのかは、明らかにされていない。だが、特定の取引の事前審査を延期し、申請側に申請の取り下げや再申請を強要するのはMOFCOMにとって珍しいことではないようだ。当然ながら、M&Aを申請した側は、申請の却下を待つよりは、申請の修正案についてMOFCOMと協議する方に動くだろう。

M&Aの審査、米国では状況が読みにくい

 政策主導で独占禁止法の執行が決定されるケースが増えていることについて、MOFCOMを非難するのは当然の論調といえる。だが皮肉なことに、Chang氏の指摘によると、米国の新政権下でも、M&Aの申請プロセスが、MOFCOMの審査のようになり始めているという。FTCやDoJによる独占禁止法の審査は、政治的な圧力を感じさせるものになっているようだ。

 Chang氏は結論として、「Trump氏は何よりも雇用創出を重視しており、長年米国における独占禁止法の執行の最終目標になってきた『消費者の福利』まで軽視されつつある」と述べた。米国の合併審査プロセスは、これまでにないほど予測できないものになっているという。

 East-West CenterのシニアフェローであるDieter Ernst氏も、Chang氏の見方に同意した。Ernst氏は「物事が以前より予測できなくなっているだけではない。中国と米国の両方で、秘密主義や操作的行動の傾向が強くなっているようだ。MOFCOMや他の機関の内部にいる信頼できる筋が、以前のように話そうとはしなくなっている」と述べた。

 EE Timesは最後に、米国の外国投資委員会(CFIUS)による審査に関連したリスクについて質問した。CFIUSの審査は厳しさを増すのだろうか。もしそうならば、どれくらい厳しくなるのだろうか。

 Chang氏は「現時点ではそれは誰にも分からない」と答えた上で、今は政権移行の時期なので、状況が非常に読みづらくなっていると述べた。

CFIUSの承認プロセスのフロー(クリックで拡大) 出典:Compass Point Analytics

 EE Timesは2017年1月に、Qualcommとの合併完了についてNXPに尋ねたところ、「当初の予定通り2017年末の完了を予定している」との回答を得た。

【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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