企業の立て直しが続く中、コンサルタントは「不満が出てくるのは、健全な組織のバロメーターでもある」と説く。大事なのは、その不満分子を不満分子として終わらせず、いかに“好転”させるかなのだ。
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「“異端児エンジニア”が仕掛けた社内改革、執念の180日」バックナンバー
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第1回 | もはや我慢の限界だ! 追い詰められる開発部門 |
第2回 | 消えぬ“もやもや”、現場の本音はなぜ出ない? |
第3回 | 始まった負の連鎖 |
第4回 | たった1人の決意 |
第5回 | 会社を変えたい――思いを込めた1通のメール |
第6回 | エバ機不正の黒幕 |
第7回 | 450人が去った会社――改革の本番はむしろこれから |
第8回 | 改革は“新しい形のトップダウン”であるべきだ |
第9回 | “不合理さを指摘できる組織”に、それが残った社員の使命だ |
第10回 | 現場の「見える化」だけでは不十分、必要なのは「言える化」だ |
第11回 | 誰もが“当事者”になれ、社内改革の主役はあくまで自分 |
第12回 | 現れ始めた抵抗勢力、社内改革を阻む壁 |
第13回 | 意思決定の仕方を変えて、周りを巻き込む! |
第14回 | 「部門ごとにファイル名が違う」はあり得ない! 必要なのは業務の“共通言語化”だ |
第15回 | 技術流出疑惑が浮上? 動き始めた不正問題 |
業務改革が進む一方で、これまで動きが停滞していた不正解明は、急激に動き出す気配があった。湘南エレクトロニクス(以下、湘エレ)の競合でもあるプレシジョンイメージング社(以下、プレ社)に、湘エレの技術が流出した疑いが濃厚になってきたのだ。
杉谷・若菜:「技術流出の話を少し聞いていますが、今日はせっかくプロジェクトのメンバー全員が集まっていることもあり、意識改革から組織風土の話、不満が出てくることの健全さについて話してみたいと思います」
以下は、杉谷の話である。
ここ最近、日本を代表する大手企業による企業不祥事が続いていますよね。
「日産自動車による無資格者による出荷検査」「神戸製鋼による試験データ改ざん」などです。第1回の冒頭においても、「相次ぐ大企業の不祥事」として2016年に目立ったものをいくつか挙げましたが、これら不祥事の原因として企業体質や組織風土の問題と帰結していることは、以前から何ら変わっていません。さらに、不祥事を起こした企業の体質改善に挙げられることも、「社員の意識改革を徹底する」「社内のコミュニケーションを活性化する」など抽象的なことばかりで具体性に欠けるものばかりです。
湘エレの社風も、「ホンネで話ができない」「社内でおかしいという声を堂々と挙げることがはばかれる」など、今、取り組んでいる改革プロジェクト以前から問題視されてきていますが、真剣に向き合ってきたのは須藤さんを中心とした、ここにいる皆さんたちです。
「どうせ言っても変わらない」……と、諦めモードの社員ばかりだったようですが、エバ機不正問題に端を発した経営施策の中で、全社員の4分の1に近い450人が希望退職せざるを得ない事態になり、最初は反発していた社員たちも、徐々に皆さんの活動に協力的になり、その変化の兆しは皆さんも感じていることでしょう。
図1を見てください。意識改革と風土改革の違いについて示したものです。
意識改革は個人に働きかけを行うものですが、風土改革は個人を取り巻く環境――すなわち、組織に働きかけをするものです。大事なことは、意識が変わることよりも、具体的な行動がどう変わるかです。
そのためには、個人の意識が変わっても、個人が動けない、ホンネで話ができない、組織内で相談できないといった社風を作っている要因を取り除くことです。こうした要因を取り除くことが、意識改革ではなく風土改革です。個人と個人の関係性を変えていくということに他なりません。
われわれ(杉谷、若菜)は、早くから湘エレに根強く潜んでいる組織風土の問題に着目してきました。改革プロジェクトの随所に風土改革の要素を取り入れてきたつもりです。そのいくつかは第11回で示してきましたが、「見える化」だけでなく「言える化」の取り組みや、「ハード」と「ソフト」を並走させながら、一人称で行動させる仕掛けで個人の主体性を引き出す、といった手法を皆さんに実践してもらってきました」。
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